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Home月刊マクロビオティック > 重藤誠「何をどのように食べるか?」

月刊「マクロビオティック」おすすめ連載

 

Vol.3:糖質制限がおすすめできない理由

炭水化物を摂らなければ
なんでも腹いっぱい食べて良い?

読者の皆さんは、この食事法がおかしいことにお気づきだと思いますが、残念ながら、日本では今だにこのようなダイエットが流行しています。この理論はいったいどこから来たのでしょうか? 19 世紀のイギリスで、ウイリアム・バンティングが提唱していた方法で当時かなり議論になりましたが、そこまで流行はしなかったようです。それから100年以上経った2002年、アメリカ人医師ロバート・アトキンスが「炭水化物を減らし、たんぱく質を十分に摂る食生活を送れば、副作用なく体重を減らせる」という研究報告をニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンに出しました。従来のダイエットのように複雑なルールがなく、量的な制限もないという魅力に加え、もともと肉食文化のアメリカということもあり、大ブームになりました。果たして、炭水化物さえ摂らなければ体重は減るのでしょうか?本当に、炭水化物は肥満の原因なのでしょうか?

炭水化物を制限すると体重が減るという論文は大量に出ています。しかし、その観察期間は、数週間から長くても半年という短いものでした。2014年に報告された、肥満成人に糖質制限ダイエットと等カロリーのバランス食ダイエットをやってもらい、2年間観察した研究では、なんと体重を減らす効果に差がみられませんでした。つまり、いくら糖質を減らしても、食べた量が同じなら体重は減らないという結論です。炭水化物を摂らないことで、食欲を落とす作用のあるケトン体が出るため、一時的に食欲が落ちるものの、長期で見ると代謝が適応してしまい、また食べ過ぎてしまうようです。

糖質制限は、明らかに有害とされる砂糖などの精製炭水化物を減らす点では評価できます。世界で出回っている
炭水化物のほとんどが精製炭水化物です。それを減らせば健康に有益であるのは当然です。しかし、無精白の全粒穀物と、砂糖や小麦粉も区別せずに、一括りにしてしまっている研究も多く、データを読む上で注意が必要です。

炭水化物を減らすとなると、食事は必然的に高脂肪、高たんぱく食になってしまいます。特に、高脂肪食で心筋梗塞、脳梗塞が増えるのは、もはや疑いのない事実ですし、さらにはがんのリスクも増加することが多くの論文で報告されています。総死亡率も上昇する傾向があることからも、寿命を短くする食事といってよいでしょう。

糖質制限はそれ自体が
炭水化物である食物繊維も
不足しがちになる

食物繊維は腸内細菌のエサとして重要ですので、通常、食物繊維の不足は腸内環境悪化を意味します。腸内細菌
はビタミン類などの栄養を合成するだけでなく、様々な生理活性物質を産生し、私たちの健康に大きく関与しています。飛躍し過ぎのように感じるかもしれませんが、腸内細菌が宿主をコントロールしている可能性も考えられており、マウスの実験では腸内細菌の変化によって行動が変わることが真剣に研究されています。実際、ヒトの研究で糖質制限食をすることで、腸内細菌のバランスが「攻撃的」に変化することが確認されています。このあたりが、心筋梗塞やがんの発生とも繋がっているのかもしれません。

炭水化物を制限することによる更なる問題は、ホルモンバランスの変化です。問題になるのは代謝を高める働きのある甲状腺ホルモンです。これが減ることが、多くの研究で報告されています。実際、慢性疲労、認知能力低下、うつ、むくみ、貧血、脱毛などの甲状腺機能低下症状があらわれてから受診される方も、決して珍しくありません。炭水化物を摂らないと、血糖を維持するためにコルチゾールやカテコラミンなどのストレスホルモンも出るため、短期的には元気が出て調子が良くなったように感じるものの、長期間になると副腎疲労の状態になり、老化を進める結果になります。

まとめると、短期的には体重が減るかもしれませんが、長期的には体重減少効果がない上、代謝に負荷をかけ、腸内細菌を荒らし、病気を増やして寿命を縮める食事といえましょう。

こういった事情から、世界的なトレンドとして糖質制限は廃れており、後で述べる地中海食やDASH食がもてはやされています。

最後に、個人的に最も問題だと思われる点として、環境負荷が高いことを挙げておきます。牛肉を1s 作るのに穀物を8〜16s 作るだけのエネルギーを消費することを考慮すると、世界の飢餓人口が8億5千万人もいる現在、肉中心の食事が継続可能とは思えません。環境負荷の点からも、穀物を穀物として食べるのが最も合理的です。糖質制限論者の言うように、健康になり、病気も治る食事だったとしても、世界でそれができる人はごく一部でしかありません。

ごくまれに、糖質制限による代謝の切り替えに適応し、長期間、常人よりも元気に生活できる体質の人が存在するのは確かです。自分がそのような例外であるというのであれば、続けるのも良いと思います。しかし、本当の健康食というのは、世界中の人間が実行可能であるべきだと思うのです。自分さえ好きなだけ肉を食べ、その分、どこかで飢える人間が増えるのを顧みない方法論が正しいとは思えません。

 

プロフィール

重藤 誠/しげとう まこと

医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。
シゲトウクリニック:http://shigeto-cl.com

 

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2018年9月号 Vol.2「人はなぜ太るのか?」
2018年8月号 Vol.1「ダイエット総論」