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月刊「マクロビオティック」おすすめ連載

 

最終回:食と病


一般的に、食べ物は体を動かすためのエネルギーと考えられています。20年以上前の話ですが、私が医学部で習った内容も、口から入った食べ物は、腸で体に必要なものだけ選択的に吸収され、いわゆる食べかすが便として出ていく、といったようなものでした。いずれにせよ、基本的な消化の生理学などは、医師国家試験の問題になりにくいため、現在も、病気とその治療法しか教えないのは、そんなに変わっていないと思います。

消化器・血液内科で研修をはじめた私も、治療法を覚えるのに必死で食べ物がどのように消化・吸収されるかなどは興味の外でした。家に居る時間が非常に短かったということもありますが、自分自身の食事もほとんど外食か、コンビニ弁当などでした。周りも皆、そんな感じでしたし、食を軽く見ていたのは私だけではなかったはずです。

そんな私でしたが、経験を重ねるにつれ、特に慢性疾患では診断したら手術か処方というやり方ではうまくいかないことに気づき、食について勉強するようになりました。医食同源という言葉が昔からあることからも、食事と病気が密接に関わっていることは明らかです。食事と病気の関係性については、かなり規模が大きな、観察期間も長い研究が行われてきており、科学的にもデータが蓄積されてきています。

ここではまず、その過程で出会った動的平衡( dynamic state )という概念について紹介します。

動的平衡とは、生命を流体と捉える考え方で、福岡伸一先生の著書などで有名になりました。ルドルフ・シェーンハイマーは、成体のマウスに重窒素で目印を付けたアミノ酸(ロイシン)を含む餌を与え、その餌のアミノ酸がどこに行くのかを調べました。生物にとって食事が車のガソリンのようなものであるとすれば、成長期が終わって、体が大きくなることはないマウスに摂取されたアミノ酸は、ただエネルギー源として消費されるはずです。しかし、実際の結果は、尿・糞として排泄されたのはたったの3割だけで、アミノ酸の6割近くが体の中に取り込まれていました( 図1)。マウスの全身のたんぱく質は、3日で半分が入れ替わっていたのです。特に入れ替わりが早かったのは腸と腎臓で、当時、新しく細胞ができないと考えられていた脳や心臓、骨に至るまで、目印を付けたアミノ酸が取り込まれていました。つまり、生物の体は凄まじい勢いで分解と合成を行っており、常につくりかえられているわけです。

最近の研究でも、食べたもののうち食物繊維以外の99%が吸収され、食物繊維さえも、一部は腸内細菌によって分解され、エネルギーになることがわかっています。

こういったことを考慮すると、生命というのは川の流れであり、食事は川の上流に降った雨のようなものとイメージすることができます。上流から毒を流せば川全体が汚染されますし、雨が降らなければ川は枯れます。食事とは、生命という川に流れる水を加える行為であり、食べ物もまた生命である必要があるのも理解できます。上流からジャンクフードというゴミや毒を流せば、どんどん体そのものがジャンクフードと入れ替わり、体調不良や病気をおこすのは必然です。そして、汚染された川のゴミを拾ったり、塩素などの薬品を流したりしたところで、川がもとにもどることはありません。きれいな川を取り戻したければ、上流からきれいな水を流し、ゴミを流さないようにするしかないのです。

病気は食事の影響を強く受けますが、それだけではないことも確かです。事実、ものすごく気を遣って健康的な食事をしているにもかかわらず、病気になってしまう人がいます。例外的ですが、どう考えても不摂生な生活をし、酒を飲んだり、煙草を吸ったりしているのに、なぜか元気な人もいます。生まれ持った体質もあるでしょうが、心の健康と
いう要素も、病気について考える上で避けては通れません。

川の例えに戻ると、いくらきれいな水を流したところで、砂漠では流れができませんし、岩や土砂崩れなどでせき止められてしまうと川は死んでしまいます。川が適切な地盤でないと、流れを作ることができないのと同様に、精神が健全であるということは、生命の大前提です。

先天性疾患や、理不尽としか思えないような病気も多いので、食事と精神だけで病気を説明することもまたできませんが、いずれにせよ、これまでの経験から、私は病気の大半は精神的なストレスに起因していると感じています。医食同源も正しいですが、病は気からも真実です。生命とはなにか、病気とはなにかという問題に、答えはないのかもしれませんが、バランスの取れた食事をとり、楽しく生きるのが、生き物として努力すべきことなのでしょう。

 

プロフィール

重藤 誠/しげとう まこと

医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。
シゲトウクリニック:http://shigeto-cl.com

 

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2019年5月号 Vol.10「なぜ糖尿病はここまで増えたのか?」
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2019年1月号 Vol.6「現代向けマクロビオティックのすすめ」
2018年12月号 Vol.5「世界のトレンドは穀物菜食」
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2018年8月号 Vol.1「ダイエット総論」