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月刊「マクロビオティック」おすすめ連載

 

Vol.9:尿酸が低いと認知症リスクに!

 

一般に、尿酸が高い人のイメージといえば、まず思い浮かぶのは、飲酒習慣のある太めの中年です。また、「尿酸が高いと痛風になる!」というイメージが強く、なんとなく悪者扱いされてしまっています。検診で尿酸が高いといわれ、なんの疑問もなしに薬を飲んでしまっている人は珍しくありません。日本の「高尿酸血症・痛風診療ガイドライン」では「無症候性高尿酸血症への薬物治療の導入は血清尿酸値8.0mg/dL 以上を一応の目安とする」との記載があり、私自身も10年ほど前までは、「尿酸が高い→薬で下げる」治療に疑いを持っていませんでした。

たしかに、多くの観察研究で、痛風患者は高血圧、腎臓病、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などといった心血管リスクの合併が多いことが示されていますが、痛風によってこれらの病気が起こっているとはいえません。おそらく、こういった病気になるような生活習慣が尿酸を上げ、痛風が合併しやすいという関係だと思われます。

さて、尿酸が高いことは治療しなければならない病気なのでしょうか?

実は、「高尿酸血症」という病名は日本にしか存在しません。世界的には痛風の症状がないのに検査データだけ見て薬で治療することに議論があり、アメリカのガイドラインでは、無症候性高尿酸血症の治療を推奨していません。

一方、2016年のランセットなどで、痛風がパーキンソン病やアルツハイマー型認知症、血管性/非血管性認知症の減少に関連すると報告されています。

尿酸が高いほうが、認知症になりにくいのです。

実は尿酸は、アスコルビン酸( ビタミンC)よりもはるかに強力な抗酸化物質で、その抗酸化力により、脳神経を保護しているものと思われます。ほとんどすべての生物は糖からアスコルビン酸を合成できますが、人間を含む霊長類は、なぜかその合成能力がありません。その合成は、4段階の酵素反応からなっているのですが、そのひとつがOFFになっているのです。はじめから合成できなかったのではなく、もともと使っていた経路が何らかの理由で止められているようにみえます。

人間は他の動物と比べ、異常に脳が大きくなっています。体重の2%に過ぎない脳ですが、消費エネルギーの20%を使う燃費の悪い臓器です。大量にエネルギーを消費するということは、そこで糖が燃えているのと同じことであり、理論上も相当大きなフリーラジカルなどの酸化ストレスが発生します。

他の動物では、尿酸はほとんどすべて排泄され、血液中には検出されません( 鳥の糞の白い部分は、尿酸の結晶であることは有名ですね)。ところが、人間の場合、尿酸の90%は腎臓で再吸収されます。これをみても、人間と他の動物では尿酸の扱いがかなり違うことがわかります。

霊長類は、脳で大量に使わなくてはならない糖の消費を抑え、強力な抗酸化物質である尿酸で脳を含む臓器を保護するように、切り替わったのではないでしょうか。

活性酸素などによる酸化ストレスは、老化、特に動脈硬化との関連があることがわかっています。酸化ストレスを抑えることは、老化を遅らせることにつながるとも考えられます。実際、他の哺乳類と比べ、人間の寿命はかなり長くなっています。

これらを考慮すると、尿酸は痛風を起こさない限りは人体に有益な分子です。むしろ、とても重要な抗老化物質である可能性があります。

高尿酸血症の治療によく使われるアロプリノール( 商品名「ザイロリック」など)は、他の薬と比べても皮膚粘膜眼症候群( Stevens-Johnson症候群)などの副作用が発生しやすいことがわかっています。症状もないのに致命的なリスクを取るのは、割に合わないように思います。ですので、現在の私は、血清尿酸値が8.0mg/dL 以上だからという理由で薬を出したりはしません。

尿酸が上がっているときは、その必要があって増えているわけですので、その原因を考えていくほうが治療としてはより本質的です。

3月号「卵とコレステロール」の回でも触れましたが、生命活動に組み込まれている成分に善玉も悪玉もありません。すべての物質、経路に意味があり、それぞれが、有益な部分( 陽)とそうでない部分( 陰)を持っていて、互いに補い合っているに過ぎません。

もっと言えば、その有益な部分も人間が勝手に良いと思い込んでいるだけで、実は未知の有害な効果があるかもしれません。逆に、今回の尿酸のように体に悪いと思われていたものが、案外有益かもしれないということもあるのです。

生命について、人間が理解している部分などほんの僅かです。おそらく人類は、自分の体のことをまだ1%すら理解できていません。

私自身、その中にいますが、その狭い理解の範囲で善悪を論じること自体が傲慢で、意味のないことなのかもしれません。

 

 

プロフィール

重藤 誠/しげとう まこと

医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。
シゲトウクリニック:http://shigeto-cl.com

 

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【バックナンバー】

2019年3月号 Vol.8「卵とコレステロール」
2019年2月号 Vol.7「血圧は下げたほうがよいのか」
2019年1月号 Vol.6「現代向けマクロビオティックのすすめ」
2018年12月号 Vol.5「世界のトレンドは穀物菜食」
2018年11月号 Vol.4「なぜカロリー制限はうまくいかないのか」
2018年10月号 Vol.3「糖質制限がおすすめできない理由」
2018年9月号 Vol.2「人はなぜ太るのか?」
2018年8月号 Vol.1「ダイエット総論」