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『月刊マクロビオティック』1月号おすすめ記事
これからは自己反省と
慈悲の時代
渡邊:戦後は一貫して自我をつくる教育をしてきました。それはいってみれば腸脳人間をつくることになったわけです。自我は自己中心となり、利益主義へと繋がってきました。これからは自己反省と慈悲の時代です。慈悲は自我の対極にある。東洋思想の文化は慈悲なのです。
勝又: 命は部分が全部繋がっているから命であって、部分が離れていると命にはならない。自分が中心だと考えるとよくありません。マクロビオティックでは宇宙も自分とひとつであるといっています。それがわかってきたら、何でもできるということがわかってきます。
渡邊:桜沢は「行」をしたからその世界が分かるのではないかと思います。今、その世界は科学の進歩によりだいぶ証明されてきました。進化論というのもそうでしょう。当時は概念的でしたが今はもう当たり前です。科学も大切だということを忘れないようにしなくてはなりません。科学に携わる上で忘れてはいけないのは、良識と洞察力を持つということです。その先に何があるかを想像し、それに向かって努力する。自我を引っ込めて慈悲を持って努力することです。そうなればシンプルに世の中うまくいくと思います。
勝又:宇宙も自分とひとつだという視点に立てば、科学もよくなっていくと思います。今は神経生理学などができているわけですから、これからも科学の力で色々とわかってくるのだろうと思います。科学で教えてもらうこともあるし、科学も感性で裏付けされた知性であって欲しいと思います。

マクロビオティックの
未来への提言
渡邊:私は、今の学校に食育に必要な食養的な教科書を作ったほうがいいと思っています。日本CI協会で作ってくれませんか?(笑)。
栄養学の分野から食養への後継者を増やそうと思っています。また、大学院大学を創設し、管理栄養師を育成して正しい食事を指導できる食医制度をつくるのも良い。海外ではすでに「アカデミー・オブ・フィロソフィー・イン・リヒテンシュタイン」という学校ができていて、日本に分校を出そうかという規模にまでなっています。
また、マクロビオティック界の課題は「大同団結(目的のために党派や団体が共通の小さな意見の違いにこだわらずに一つにまとまること)」ではないかと思うのです。
今、玄米を食べるとか体に良い食事をするとか、そういう活動をしている小さなグループはたくさんあるでしょう。地域ごとにもっと構築していけばよいと思いますが、それをネットワークで繋ぐことができればもっと良い社会になるし、地域経済も成り立たせることもできる。そうすると安定的な社会になっていきます。それが進むと良識的な「死生観」
を持つようになります。
つまり、自然と共生できるということです。私の直感ですが、6万人の会員ができれば変えることが可能だと思っています。
勝又:マクロビオティック運動は社会性を持っています。個人のものに執着してしまうとものにできない。マクロビオティックを実践している人には、もっと社会性に目覚めて欲しいと思います。自分自身をがんじがらめにしている人が多いように感じます。社会にもっと出ていかなくてはなりません。
この度、私の本の出版に関して渡邊昌先生にお書きいただいた前書きを一部ご紹介させていただきます。「私たちは日々の生活をなにげなく喜んだり、悲しんだり、怒ったりしながら生きています。このような感情はどこから湧いてくるのでしょう。私たちは意識する自分の内に意識に上らない広大な意識下の世界があることを感じています。そのひろい感性の世界を鋭敏にせねば陰陽を感じることはできません。陰陽によりものごとを相対的に受け取ることができるようになれば、こころを平安に人生を楽しめることになるでしょう。」
この文章こそがまさしくマクロビオティックの本質なのです。マクロビオティックは心を平安にするものですが、今の時代を生きていると必ずしも心は平安ではないのです。
桜沢の教えの中に「世界恒久平和の憲章」というものがあります。世界平和は世界全てを変えないといけないのではありません。マクロビオティックは一人でも世界平和のため
の構成員になることができるのです。多くの方に自由と健康になってもらい、知恵、知識を身につけ、まずは自分から幸せになって欲しいと願います。どんな人でもできることなのです。
渡邊:次世代へのメッセージをとのことですが、私は今の若い人たちには絶望していません。基本的にはみんなよく考えてやっているなと思います。人のためになろうと頑張っている若者も結構います。感性を良くして、自然と共生していければ世の中は良くなるはずだし、人類全体も良い方向に進むと思います。

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渡邉 昌 /わたなべ しょう
医学博士。慶応義塾大学医学部卒。同大学病理学教室、アメリカ国立癌研究所病理部、国立がんセンター研究所病理部を経て、1985 年より同疫学部長として、がんの疫学研究、2005 年より現職。国立健康・栄養研究所理事長、東京農業大学栄養科学科教授、日本綜合医学会会長。ライフサイエンスにも造詣が深く、生命科学振興会理事長も務める。著書に『栄養学原論』『食事でがんは予防できる』『糖尿病は薬なしで治せる』『薬なし、食事と運動で糖尿病を治す』『病気予防百科』『病理学テキスト」など。 |
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※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。
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