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『月刊マクロビオティック』9月号おすすめ記事
マクロビオティックの未来へ
「ジャズとマクロビオティックが教えてくれたこと」
立石一海
聞き手:高桑智雄(桜沢如一資料室スタッフ)・編集部

今月は桜沢如一資料室スタッフの西村優子さんから立石一海さんをご紹介いただき、勝又との対談となりました。立石さんはジャズピアニストで、作・編曲家、プロデューサーとしてご活躍されています。
スタジオジブリの楽曲や童謡・唱歌をジャズアレンジした作品を発表するなど、ジャズ界に新しい流れを送り込んでいる立石さんは、体調を悪くしたことでマクロビオティックに出会いました。
今回は、どのようにマクロビオティックを考え、実践しているのか、また、音楽とマクロビオティックの関係性などをお聞きしました。
聴くのも奏でるのも楽しい
勝又会長(以下、勝又):立石さんは以前、サラリーマンをしていたとお聞きしました。まずは、サラリーマン時代を経て音楽活動をされた経緯をお聞かせください。
立石一海(以下、立石):音楽家として活動を始めて丸5年になります。それまでの約15年間はレコード会社で制作や販促といった仕事をしていました。ピアノを本格的に始めたのは大学3年からですが、音楽は子どもの頃から聴くのも大好きでした。
エレクトーンは12歳から習い始めました。子どもの頃に当時はまだ珍しかった大人のための音楽教室に父親が通っていた時に付いていったのですが、父の姿を見ているうちに弾きたくなってしまって、こっそり触っていたらインストラクターが私を見つけて教えてくれたのです。気がつくと1曲できあがっていました(笑)。
無理に習わされたのではなく、自分がやりたくて始めたので、レッスンに通っていても苦痛を感じることは一度もありませんでしたね。
音楽は、聴くことも自分で音を出して奏でることもとても楽しいものだと子どもたちに伝えたくて、今も
活動しています。
勝又:それが本当の勉強なのでしょうね。やってみて「好きだ」と思うところから始めるべきです。そうしたら学校教育の1ページ目はいかに勉強が面白いか、楽しいか、そのことを伝えることから始めなければいけないと思いますね。
マクロビオティックに出会って
高桑智雄(以下、高桑):立石さんはマクロビオティックを実践されていると伺いましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?
立石:音楽業界にいたものですから、生活が不規則で、寝る間も惜しんで毎日夜遅くまで仕事をして、その後家に帰って晩ご飯を食べるというメチャクチャなサイクルで生活していたので、食事する時間も不規則で食べるものもコンビニ食やファストフードなどが多かったんです。
そんな仕事を15年していましたが、13年目くらいの時、体がダルかったり体重が増えたり減ったりを繰り返しました。体に負荷が溜まっていたのでしょうね。健康診断を受けたところ、ポリープが10個ぐらい見つかりました。さすがにこれではいけないと思い、マクロビオティックを始めたことがきっかけです。
オフィスが青山にあって、マクロビオティックもブームで表参道や青山にお店があったのです。ちょっと高めの価格だと思いましたが、やってみたくなり、やり始めたら体が軽くなっていくというか、体だけではなくて気持ちも軽くなる感覚が不思議とあってクセになっていった感じです。
編集部:玄米や野菜を中心にした食生活をしたら体も気持ちも変わってきたと感じたのですね。
立石:「蒸しただけの野菜がこんなにも美味しいなんて」と驚きました。コンビニの弁当にも野菜は一応入っていますが、美味しいと感じたことはありませんでした。野菜やお米を味わって食べるという感覚を久しぶりに味わったというか。とにかく感動しました。
勝又:初めて玄米を食べても違和感がなく、美味しかったわけですね。それで体調はどんどん良くなっていくという変化を感じられたと。
立石:そうですね。変化を感じたと同時に、今の仕事も「これで良いのか?」と自分自身の中で整理できるようになりました。自分の頭の中、思考回路が変わっていったという気がします。マクロビオティックを始めて自分の将来や人生を改めて見つめ直すきっかけになりました。結局、当時していた仕事は数年後に辞めることになるのですが(笑)。
勝又:私もそうですが、マクロビオティックを始めると同じような体験をしますね。自分の味覚が変わったり、体で実感していくものですから、間違いないなという感じになっていきます。マクロビオティックの食事をしている中で、栄養学的な考えはなかったでしょうか?
立石:それはなかったですね。自分の体と相談して、一番欲しているものを食べようと思いました。今も100%マクロビオティックをやっているわけではありません。友人や仕事仲間は音楽業界やミュージシャンなので普通の食事をするのですが、その時は一緒に有難くいただきます。
それでも自分の体と相談して野菜が欲しいと思う実感があったので、お肉を摂っていた方がいいと思うことはほとんどないですね。
音楽と向き合う
勝又:桜沢如一の本は何か読んだことがありますか? あれば、感想をお聞かせください。
立石:「ゼン・マクロビオティック」を読みました。すごくシンプルな考えだなと思いましたね。一貫していましたので、疑問に思うよりもこういうものなのだと思いました。読んだ時期や周りのブームというのもあったと思います。自分の体に良いことをしたいという思いが一番にあったので、すんなりと入ってきました。
勝又:食べ物によってピアノの演奏の仕方や音の響きなど、何か違いが出てくるものなのでしょうか?
立石:自分ではよく分かりませんが、おそらく聴いている人には分かると思います。特にジャズはとても自由な即興を重んじる音楽なので、音を聴きながら「今日は体調あまり良くないのかな」「気分が良いのかな」と感じることはあります。
私がマクロビオティックを実践したから感じやすくなったのかは分かりませんが、相手の演奏を聴いていてそんな風に感じることもあるので、その時食べているものが影響していることは間違いないと思っています。
高桑:楽器はメンテナンスをしますよね。演奏する人間の体も含めて楽器だと思えば、食べ物によってメンテナンスするという考え方もあるのかも知れませんね。
立石:ピアニストは自分のピアノを持ち歩けませんから、会場にある楽器を運命の出会いだと思って弾いて、そのピアノと友だちになるしかありません。会場に着いてリハーサルでポーンと音を出した時に、会場に響く音と同時に自分がその音・音楽に対して、そして、楽器に対してどう向き合っているかということをまずは感じるようにしています。
それと同時に今日の自分の調子がどうなのか、今日はちょっと疲れているかな、もう少しリラックスすることを本番までに心掛けた方が良いのかな、演奏直前だけど野菜をもっと摂った方が良いのかな、と考えたりもしますよ(笑)。

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※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。
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