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『月刊マクロビオティック』11月号おすすめ記事

 

自らを俯瞰しながら… 社会に生きる

冨田 貴史(冨貴工房代表)×勝又 靖彦(日本CI協会会長)

 今回は、旧暦や茜染め、鉄火味噌などの手仕事のワークショップを主催している冨貴工房代表 冨田貴史さんにお話をお聞きました。
 冨田さんは東日本大震災における福島第一原発事故の被災者支援活動もしています。多くの人との出会いやご自身が経験されたこと、感じたことなどをお話していただきました。

 

編集部:冨田さんは鉄火味噌作りや染物などのワークショップ、旧暦を学ぶ講座などをされていると聞きま
した。何かきっかけがあったのでしょうか?

冨田貴史(以下、冨田):元々は音楽業界でアーティストのマネージメントや営業の仕事をしていたんです。その時に心身のバランスを崩したことがきっかけで禅やヨガに出会い、坐禅をしたりヨガをしている過程で「食」を見つめ直すようになりました。
 その後も色々な人たちからの影響で酵素玄米を炊いたり、自分で梅やヨモギの酵素ジュースを作ったりしていました。調味料や油も自然のものを使うようになり、徐々に生活全般が変化していきました。

編集部:天然のものを意識的に自分の中に取り入れることで、自分が変わっていったと感じたのですね?

冨田:感じましたね。例えば添加物がたくさん含まれているような「トゲトゲしたもの」を身体に入れると、自分の精神もトゲトゲしてくるように感じました。ケミカルな鹹からみ(塩辛い味)と天然の塩の鹹みでは取り入れた後の精神状態が全く違うし、甘味や酸味、苦味についてもそう感じました。「食するものが自分に影響をもたらす」ということが徐々に分かってきたので、マクロビオティックを理解する少し前の段階でも人工的に作ったものを摂り入れることによる影響が理解できたのです。
 陰陽思想と旧暦は2003年頃から学んでいました。それ以来、旧暦と陰陽五行は僕にとって世界を見つめる物差しのベースになっています。
 僕にとってのマクロビオティックは何かをする・しないではなく「ものの見方そのもの」だと思っています。この世界は、無双原理によって見ることもできるし、善悪(二元論)や優劣のような見方もできるということだと思います。
 一年や一日の中でも、光の当たり方が変化して陰陽が循環しているし、心身の状態も緩まったり引き締まったりする陰陽で循環しているという見方が備わってくるにつれ、実際にその陰陽を使って身体の状態や食べ物を見ることができるということをずっと学び続けています。
 ですから、マクロビオティックを止める・止めないということはなく、常にその物差しであらゆるものを見ています。社会や政治経済についても同じ目で見ていますよ。

 

事に仕える=仕事

勝又会長(以下、勝又):冨田さんは東日本大震災の被災地に行って活動もされていますね。社会運動をすることになった経過みたいなものをお聞かせいただけますか?

冨田:先ほどお話したとおり、ヨガや禅を通じて自分の状態が俯瞰できた時期がありました。02〜03年頃が呼吸法や身体の使い方、見つめ方、食べ方が変わっていくという過渡期だったのですが、自分の仕事や暮らしを根本的に見つめ直したいという気持ちが高まり、立ち止まるために会社を辞めたのです。
 先のことは何も考えていませんでした。その時に強く想っていたのが「本当の仕事がしたい」ということ。今までの仕事が本当か本当じゃないかという、否定と肯定のレベルではなく、自分自身がもう一度、今のこの気づきの状態を基に立ち止った時に何が新しく流れこんでくるのか。それに対して真摯に向き合って出来事に仕えるのが「事に仕える」という意味での仕事だろうと思いました。
 すると、世の中の流れがよく見えてきたのです。立ち止まった時に見えてくるものは自分の心の写し鏡でもあると思うし、それら一つひとつに向き合うことが大切です。僕はすぐに、憲法9条が変えられようとしている現実や日本の原発の実情に出会ったことを通じて、それらと向き合うことを始めました。
 この社会の中に起きていることというのは、相似象(そうじしょう)というか、フラクタル(複雑な形状を同じパターンの
図形で表す数学的概念、構造)になっていて、僕の精神の中にある対立、つまり「コントローラー」である自分と「抑圧されるもの」としての自分との関係、または怒れるものと怒りを抑えるものの関係に気づきました。単純に社会運動をしていこうという感覚もありましたけれど、僕の中にある多様な自分同士の関係性を見つめ直すことで「僕一人分の責任を取る」という行動をしていくことこそが、自然に社会に対する理解を深めていくのだと気づきました。
 また、このように自分に変化を及ぼしていくのと同様に、世界の変化に関わっていくということは特別な社会運動ということではなく、とても自然なことに思えてきました。

 

陰陽の理解

勝又:今年の4月に当協会で『マクロビオティックの陰陽がわかる本』を作りました。陰陽の体験の例が多く紹介されていて、陰陽が分からない初心者でも読みやすい内容です。実際に読んだ方から「陰陽がよく分かるようになった」「陰陽というと雲の上の変な原理だと思っていたが、身近なものだということがこの本で良
分かる」と言っていただきました。

冨田:素晴らしいですね。僕もまさにそこを思っています。
 知識は大切だと思います。情報というのは、単純にそのグッドプラクティス集という意味で、「これはこれに効くよ」とか「これにはこういう効能があるよ」というものは重要なのでインプットしておいた方が良いと思います。しかし、それをどのような物の見方で見るかという世界観はもっと重要な知性です。例えば陰陽や五行を理解するとか、または世
界がどのように連結して繋がり合い、有機体になっているのかという理解を深めて感性を磨いていくことが重要だと思っています。

 

「ものづくり」がもたらす感性

冨田:僕は「手仕事(自分の手で自分の仕事を作る)」ことをとても大切だと思っています。例えば塩を自分で炊いてみる。海水を汲み、竈(かまど)を作り、昼夜塩を炊く過程の中で、塩と自分との繋がりをじっくり見つめることができます。このような行為を通じて、私たちの命を支える有難いものとの繋がりを深いものにしていくことや、実感を伴う理解を自分のものにしていくことがマクロビオティックの道だと思っています。
 僕が工房で続けている味噌作りや鉄火味噌作り、草木染めについても同じような想いで取り組んでいます。
 これからの人生の中で何をしていくか分かりませんが、「これは大切にしていく」というものがあります。それは「養生のための手仕事」です。命を育む、命を養うためのヘルパーやメディスンを自分たちの手を通じて作り出して、それを取り入れたり共有したり循環させていくことが、結果として「自分たちは自然環境や社会そのものと深く関わり働きかけあっている当事者の一人である」という自覚を育んでいくのだと思います。

勝又:かつて、当協会は先頭をきって塩運動を行いました。塩作りには様々な手法があったのですが「全てオリジナルで手作りのものでなければダメだ」と運動を起こしたのです。
 当時、塩はタバコと同じで民間では作れませんでした。塩を作る許可を国から得るというのは、今まで誰もやったことがなかったのです。最初は天日塩を作ろうとしたのですが、日本で天日塩が作られた歴史はありません。湿気が多いので、天日だけでは塩にならないわけです。
 さらに、自然の塩が良いということの学理的な証拠は何もありませんでした。そのために市民の経済的基盤となる組織を作ったりもしました。やることなすこと全てが誰もやったことがないことばかりでしたが、それでもチャレンジをして色々な人に集まってもらったのです。政治的運動をしようとする人、学理的に良い書を作ろうとしている人など、皆様々な考えの人が集まったので、これをまとめていくのがとても大変でした。そういう運動の歴史の中でやってきたことが、自分にとってとてもプラスになりました。現実を見てきたということですよね。だからこそ最終的には想像力、独創力がいかに大切かがよく分かるようになりました。

冨田:すごくよく分かります。

勝又:若い人たちには、知性的な知識・知恵というものと、感性的な知恵というものがあることを理解して欲しいですね。今の時代は知性ばかりが偏重されてしまって、感性はまるっきり評価されないという変な時代です。だからこそ、もう一度感性的な価値ということに立ち返えらなければならないと思います。

 

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※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。

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