日本CI協会はマクロビオティックの創始者桜沢如一によって創設された日本で最も歴史のあるマクロビオティックの普及団体です。

home クッキングスクール イベントのご案内 書籍紹介 ショップ・レストラン情報 リンク アクセス お問い合せ

活動と入会案内

■会長からのごあいさつ
■概要
■理念
■沿革
■『入会のご案内』
■マクロビオティックとは
・辞書で引くと・・・
・桜沢如一・桜沢里真
・コラム
■研修制度

スタートセミナー日程



健康・病院案内

■健康相談
■定期健康講座
■病院案内

月刊マクロビオティック
食養生や料理レシピなど最新情報が満載です。

■最新号目次
■ご入会の案内
■図書館


マクロビオティックWeb

マクロビオティックWeb

マクロビオティック商品の商社オーサワ

マクロビオティック商品の商社オーサワ

リマネットショップ

 

 
Home月刊マクロビオティック > 抜粋記事〜今月のおすすめ記事

『月刊マクロビオティック』5月号おすすめ記事

味覚と健康〜感性で味わう大切さ〜【後編】

学習院女子大学 教授 品川明 × 日本CI協会会長 勝又靖彦

 前号に続き、「第9回 マクロビオティック医学シンポジウム」でご講演いただく学習院女子大学 品川明教授と当協会会長 勝又靖彦の対談です。
 前号では、品川先生が行っている「味わい教育」の話、そして知性教育の問題点や感性教育の必要性が話題となりました。

 

現代人の味覚

編集部:品川先生にお尋ねしますが、現代人の味覚について、どう思われていますでしょうか?

品川明教授(以下、品川):「味覚力」と言ったら良いかも知れませんが、甘味や酸味などの基本的な「五味」をどれくらい識別できて、どれくらいの閾いきち値で認識できるかという視点で考えるのですね。5年ごとの調査結果があるのですが、低下しています。例えば、小学校5年生で行なって、5年後にまた小学校5年生で行なう調査なのですが、味覚力が低下しているのが事実です。
 何故味覚力が低下してきたのかというと、人によって味を感知する味み 蕾らい(舌の中に多数存在する味覚受容器官)の数も違いますが、年齢的には子どもの方が多いわけです。
 しかし、我々の味蕾の数は少なくなっていますが、味への感受性は我々の方が高いですね。それは意識して訓練しているかどうかですね。きちんと咀嚼して、見た目や口の中での変化を楽しんで、きちんと色々な味を確認することができているからです。
 それが、咀嚼が少なくてすぐ飲み込むと、味わう経験を自ずから低下させてしまっています。
 好きなものを食べることは重要な視点ですが、いつも同じ食べ物で同じ味ばかり提供しているというのであればこれも問題です。社会的にどのくらい多様な味わいがあるかを考えると、品目は多岐にわたりますが、味わいは均一化しているのではないか、そのときの味わいの変化を何で求めているかというと「香り」のような気がします。味はかなり一定の味わいしかない気がします。素材の味を大切にすると言っていても「本当に本来の味なのだろうか」ということをきちんと認識できる人もあまりいない気がします。味を変化させることによって食べられるようになるというよりも、
均一的な味志向を誘導している何かが現代にはあるのではないか、と思っています。
 その一翼を担っているのが、それらをあまり認識しないお母さんであったり、それほど重要視していない企業やマーケットだと思っています。人間は楽な方に思考するのが通常なので、楽な方へ行った結果、味の多様性がなくなって味覚力が低下していると考えています。
 食べなければ味わいは形成しないわけですから、きちんと咀嚼して唾液を出して、舌を鍛え五感を研ぎ澄ませて味わって、感じるものを楽しみながら食べる習慣が大切です。食べること自体が素晴らしいことであって、我々の血となり肉となっていることを実感する意識が大切です。
 入れることも大切ですが、出すこともすごく大切です。自分の食べたものが良い物か悪い物かは「うんこ」を見ればある程度予測がつくことを実感するのも、マクロビオティックが教えていることの一つだと思いますが、人間の体全体が地球的な規模で、農林水産業が体の中にあるという視点の中で、きちんと分解・循環して対応しているか、もっと把握することが必要で、その最初の事始めが味わうこと
の大切さだと思います。
 その味わうことの大切さの結果、自分のヘルスケアが、何もしなくても出てくるような気がします。自分の中で把握して、自分の中でヘルスケアができるような学びが、これからの日本CI協会さんの授業にあったら素晴らしいと思います。ぜひ、そのきっかけとして味わい教育で感性を養っていただきたいです。

 

本能を取り戻す

勝又会長(以下、勝又):みんな正しい本能を持って生まれてくるわけですよね。赤ちゃんはお母さんのおっぱいを夢中で吸いますね。我々が舐めても母乳は美味しくないですが、赤ちゃんは必要だから飲むわけです。母乳が出なくてはミルクもやむを得ませんが、赤ちゃんはお腹が空いて仕方がないから飲んでいるわけですね。
 ある日、私の家内がおっぱいが張って仕方がないからと、ミルク育ちの赤ん坊におっぱいを飲ませたところ、全身の血液を全部吸われるのではないかというくらい夢中になって吸っていたのです。
 結局、ミルクを与えられていた赤ちゃんも本能を持っていますから、その時自分に必要なものは何かを分かっているわけです。

品川:まさにその通りです。赤ちゃんはお腹が空いた時に泣きます。泣いた時に食べさせる、とお母さんは判断できます。ところが大人は、朝起きて朝食を摂り、仕事をして昼食を摂り、また仕事をして夕食を摂るというインターバルになっています。味覚がある程度休止状態になって、本来お腹が空くからこその味わいであり味覚があるわけです。
 現代において間食を否定しているわけではないですが、それらは甘いもの・味の濃いものが多いですね。それが何をもたらすかというと、食事は食欲ではなくて「時間だから食べる」ということで、味覚を感じながら食べているか疑わしい現状があるのではないでしょうか。
 断食をするとすごく鋭敏になりますが、食と食の間が長いという時間的な要素があると思います。間が短くなればなるほど、味覚というのは鈍くなるので、美味しいと感じるにはそれだけ高い濃度の何かを求めることになります。さらにそれは悪循環となり、食欲を失くしてしまいます。

勝又:私は22才の時からマクロビオティックを始めたのですが、それまで美味しく感じていたジュースが薬臭くて受け付けなくなりました。「あ、味覚は変わるんだな」、これが一番の驚きでしたね。
 それから、色々と悩んでいたのでマクロビオティックを始めたのですが、悩みそのものは解決していないのに、心の苦しさはなくなったのです。
 それまで味覚や心は絶対的で変わらないものと思い込んでいましたが、みんな変わるということが分かって、一生懸命マクロビオティックをするようになったのです。
 人間も自然の一部で自然に生かされているわけですから、自然の摂理、これを我々は陰陽と言っていますが、陰陽のバランスがとれたものを中心に食事をしていけば、段々と本来の本能が目覚めてきて自分で何が正しいか、何がその時必要かが分かってきます。
 そういうものは、生まれた赤ん坊が持っている本能のように、自然の摂理を逸脱しなければ、その時必要なものは体が教えてくれると思います。それには生まれながらにして持っている人間としての判断力を取り戻すことが大切で、マクロビオティックはそのプログラムなのです。いくら「栄養成分でこれが良い、これが悪い」と言っても、判断力を変えないことにはダメですね。

 

自分の味覚を知ることが大切

品川:大人も子どももそうですが、味覚力の低下の側面でいうと、五つの味に対して自分の味覚の特徴をきちんと自分自身で把握しなければいけないと思っています。人よりも劣る・劣らないではなくて、自分の味覚の特性を知るということです。
 例えば、甘さに対して鋭敏である、しょっぱさに対して鋭敏である、ということです。これは人によって全然違うのですね。また、食事は一つひとつの味だけで構成されているわけではなく、口内調理も含めて、味のミックスが常に行われていますが、古来、東洋食は口の中でアレンジした味を楽しむ食である気がするのですね。生ものを食べて咀嚼して、固さや変化を重んじて、口の中に長く滞留させる素晴らしい文化が日本の本来の家庭料理だと思うのです。それを体感していれば、他に何もしなくても味覚力は向上します。
 「すべてに対して鋭敏な方が能力が高い」と、間違った解釈で捉えがちですが、それは特性であって特徴に過ぎません。ただ、自分の基準を認識するためにも、すべての方に味覚力の意識を持っていただいたほうが良いような気がします。

勝又:人間には判断力があって、味覚本能もあると思いますが、判断力は年齢や季節、環境などによって変わっていくもので、それらを調和させようとする働きを持っていると思うのですが、必要な時に必要なものを食べたくなる判断力が働かなくて、体をおかしくしてしまっているのが問題だと思っています。
 マクロビオティックを実践している人に「玄米と野菜しか食べない」と言う人がいます。その中の一部ですが、感性を忘れ知識に縛られて、頭だけで食べている人がいます。「ご自身の味覚本能をもっと信じて!」と言いたくなりますよね。

品川:まさにその通りです。我々は皆、味覚を感じる能力を持っています。それが人間であるからこそ、より文化
的で、よりヘルス的で、より感性から得られる知性が自分の健康と社会の健康をもたらすことを担う能力を与えられているのに、それを使おうとしていない現実が世の中にはあります。
 今回の対談を通して、教育がとても大切で、美味しいものを食べたいのであれば「欲しい時に食べる」、その時の「欲しい」がどんな欲求かという視点も、食べる要素において必要になってくるとますます自覚した次第です。

勝又:シンポジウムでのお話も楽しみにしています。今日はありがとうございました。

 

>>前編へ戻る

MAYA

品川 明(しながわ あきら)
1955年生まれ。東京大学大学院修了 農学博士。専門分野:味わい教育(フードコンシャ
スネス論)、環境教育、水圏生物化学・生理生態学。食べ物(命:生物)と接するとき、自分の感性(五感力)を鍛えるとともに、食べ物の味わい方やその背景を知ることが大切である。あらゆる世代に必要な楽しくて美味しい味わい教育を実施し、食物の大切さや本来の価値を認識し、生き物の命や生き物が生息している環境を大切にする人を育てることを目標としている。日本やアジアの食文化を支える魚介類や魚醤などのうま味成分について研究。また、食(生き物)を通じた人と生物と環境との繋がりを研究し、その事実や発見を食教育に応用する教育手法を研究。


※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。