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『月刊マクロビオティック』11月号おすすめ記事

『「おいしさ」の科学』佐藤成美氏に聞く

いつまでもおいしく味わうためには健康でいることが一番

 

 

 

食物連鎖と味覚

 

編集部:おいしいという味覚は人種によってずいぶん違いますね。同じ日本人でも味覚はそれぞれです。味覚細胞はどのくらいの周期で入れ替わるのでしょうか?

佐藤:約10日から2週間で入れ替わると言われています。味覚は口に入った食べ物が安全かどうかを判断するセンサーです。ですから、いつも新しいフレッシュな状態でないとセンサーが働きにくくなります。
 人間の体で細胞の入れ替わりが早いのは消化管です。消化管は口から肛門まで繋がっています。中は空洞ですから消化管の中は「体の外」にあるといえます。
 特に小腸の上皮細胞は一日で入れ替わると言われています。食べた物は小腸から栄養が「体の中」に吸収される
ので、いわば最後の砦です。ですから味蕾と同様、いえ、それよりもっと常にフレッシュな状態でないといけません。小腸にはたくさんの防御機能や免疫機能が備わっているのです。

編集部:加齢とともに新陳代謝が低下しますが、味覚も老化するのでしょうか?

佐藤:味覚は聴覚や嗅覚に比べて衰えにくいと言われています。高齢になっても、健康な人の味覚機能は若い人に比べてほとんど低下しないことがわかっています。その理由は先ほどの味細胞の入れ替わりの早さです。常に新しい細胞に置き換わっていますから。
 しかし、現実には高齢者で味覚が鈍くなったという方も多くいらっしゃいます。その原因は嗅覚の低下によるのではないかと考えられています。嗅覚はおいしさの重要な要因です。ですから、老化により嗅覚が低下すれば、おいしくは感じられないでしょう。

編集部:おいしさにとってにおいは重要ですね。

佐藤:それと、多くの薬が味覚障害の原因になります。高齢者は薬を飲んでいる方が多いので、薬の副作用による影響も考えられています。

編集部:薬の副作用には味覚に対しても及ぶのですね。

佐藤:食べ物を食べるとき、よく噛むことはとても大切です。よく噛むことで唾液と混ざり、食べ物が細かくなり消化しやすくなりますし、おいしさも感じることができますから。先ほど、料理教室でいただいたお料理はハトムギやアマランサスなどの穀物を使っていましたね。よく噛むことの大切さを教えていただいたメニューでした。

編集部:マクロビオティックはよく噛むことを大事にしています。今のお話に合ったメニューで、喜んでいただけてよかったです。穀物は主食として大切な食べ物ですね。

佐藤:日本を含む東アジア圏はお米が主食で、欧米は小麦が主食の文化です。お米はそのままでは固いので、水で炊いていただきます。小麦はお米に比べて砕け割れやすいので、粉にしてパンや麺として食べます。それが理に適った食べ方ですので長年続いてきたのです。
 もちろん、栽培適地からも東アジア圏ではお米の栽培に向き、欧米は寒く、雨が少ないので小麦の栽培に向いて
いるという条件もあります。

編集部:長く続いてきた食文化には、それぞれの背景があるのですね。佐藤:いろいろなものを食べるという面では、欧米とアジアを比べるとアジアの方が雑食性が高いのです。「雑食性が高い」とは、多くの種類の食べ物を食べているということです。その中でも日本はさらに高く、1万2000種位あると言われています。これは南北に長く、季節性があり、風土が生み出している生物多様性のおかげと言えます。
 いろいろなものを食べたほうが、味覚は磨かれます。ですから日本人は他国に比べて味覚が優れていると思いますね。

 

栄養素と味覚

 

編集部:よく三大栄養素と言いますが、おいしさと栄養は関係があるのでしょうか?

佐藤:私たちの体を作っている多くの物質はタンパク質、炭水化物、脂質です。栄養素と言っていますが、もともと体に必要なものなのです。

編集部:微量のビタミン、ミネラルも含めた栄養素によって私たちの体が作られているということですね。そしてさらに食べて補充しているだけなのですね。

佐藤:私たちが食べているものの大元は太陽エネルギーです。それを光合成によって植物はデンプンを生み出しす。
動物はその植物を食べて生きている。
 これが食物連鎖です。
 つまり、物質は循環しているのです。食べる側からの視点ではその物質のことを栄養素と呼んでいるに過ぎません
物質循環と栄養素は観察する視点によって違います。

編集部:食物連鎖と栄養素が結びつくとは思いませんでした。今、ちょっと頭が混乱しています。

佐藤:私が学生に説明しても、学生はなかなか理解できないようです。それは栄養の面と生化学の面がなかなか一致しないからだと思います。
  例えばタンパク質を例にしましょう。栄養的には、体を作っているのはタンパク質だからしっかり食べなさいと言われます。生化学ではタンパク質は細胞を作っているのだと教えられます。大きな視点で観ると、体は細胞でできて
いるのでどちらも同じことを言っているのです。

編集部:はい、分かります。

佐藤:私たちは生き物を食べていますね。これを栄養素と呼んでいるに過ぎません。生き物を食べて、壊して(分解・消化)、自分のものにしているのです(吸収・循環)。食べるということは、その循環の繰り返しです。ということは、食べたものと同じ物質で私たちの体ができているということが解るでしょう。

編集部:人間にとって一番好きな味はやはり甘味なのでしょうか?

佐藤:甘味は生存に必要なエネルギー源を示す味です。例えば、デンプンはグルコース( ブドウ糖)に分解され、グルコースから生命活動に必要なエネルギーを取り出しています。毎日必要なエネルギー源ですから、当然おいしくないと食べ続けることはできないと思うのです。
 塩味も、体がナトリウムを必要としているのでおいしいと感じます。神経伝達にもナトリウムが必要です。うま味はアミノ酸の味でタンパク質形成に欠かせません。こういったものは生命維持に必要不可欠なので必然的においしいと感じます。

編集部:体を作っているものだから、本能的においしいと感じる、ということですね。デンプンはほとんど味がないのではありませんか?

佐藤:デンプン自体に味はありません。お米を食べたときに甘いと感じるのは、唾液に含まれているアミラーゼ( 消化
酵素)がデンプンに作用して糖に変えられるためです。化学反応を起こしてほんのりとした甘さを感じるに過ぎませんが、だからこそ主食として食べ続けてこられたのです。

編集部:味がないから食べ続けてこられた?

佐藤:こんなに長い間お米を食べてきたのは、米にエネルギー源となるデンプンがたくさん含まれているからですが、理由はそれだけではありません。それはどんなおかずにも合うことです。もし、お米自体に強い味や香りがあり、それだけで満足できればおかずは必要ありません。お米の味が淡泊であるからこそおかずのおいしさが引き立ち、食べ飽きないのです。
 実は、日本人にとってお米と大豆の相性はとても良いのです。お米だけだとどうしても足りないある種の必須アミノ酸=リジンを大豆が補ってくれます。日本は昔から味噌や豆腐といった大豆の加工食品が多いですよね。科学が発
達していない時代でも、ご先祖さまは大豆が体に必要だと知っていたのでしょうね。

 

 

別腹の仕組み

 

編集部:佐藤先生の著書の中で「別腹」のことが書かれていて、興味深く読ませていただきました。科学的な仕組みを教えてください。

佐藤:「食べる」ということについては脳がコントロールしています。脳はいつもエネルギーバランスを感じています。お腹が空くと食欲が湧きますね。これは体からの情報が脳に集まり、摂食中枢が働くためです。そして食べ物を食べます。お腹いっぱいになったら食べることをやめます。これは胃の中が食べ物で溢れているから胃が「もうお腹いっぱい」と言っているのではなく、血糖値が上がるなど体内の情報を受けて、脳が食べることをやめる
という判断をしています。
 もちろん血糖値だけではなく、ホルモンの分泌など様々な情報も同時に受け取っています。最近では腸管ホルモンの働きにも注目が集まっています。

編集部:胃や腸の許容量が食べる量を決めていると思っていました。

佐藤:脳は血糖値や様々な情報を受け取って「お腹いっぱい」と判断していますが、胃自体の許容量はあるはずです。「別腹」というのは、食後のスイーツやお酒を飲んだ後の締めのラーメンなど、私たちはそれが「おいしいと知っている」から脳が判断して食べることをいいます。
 実際、食べることができていますからね。食欲は体重を維持するために備わったものです。ある程度食べるとレプチンなどの食欲を抑えるホルモンが働き、脳の満腹中枢を刺激します。そういった判断がコントロールできなくなると食べ過ぎて、その結果肥満につながります。

編集部:今、世界的に肥満人口が増えて問題になっています。

佐藤:私は学生たちに「この豊富な食生活がいつまで続くか?」という問題を投げかけます。様々な見方や答えがあると思いますが、この先どこまでこの食生活を続けることができるかを考えることは大事なことです。
 肥満についていえば、ここ数十年、私たちの摂取カロリーは増えていませんから、やはり昔に比べて動かなくなった、エネルギー消費代謝活動が落ちたと言えるのではないでしょうか。現代生活ではもっと体を動かす方がよいでしょう。それと、おいしい料理や商品がたくさん出てくるので、食欲は増すばかりですね。

編集部:空腹は最高の調味料と、著書にも書かれていますね。

佐藤:空腹を感じたとき、においや色などの食べ物の情報が加わるといっそう食欲を刺激します。「おいしい」というのは「快感」なのです。その快感が持続して満足感が生じ、食べ続けることができます。

編集部:食欲は人間の三大欲求のひとつですから、食べることが快感だというのは納得できます。

佐藤:元気な人は必ず食欲があり、食事をおいしく味わうことができます。いつまでもおいしく味わうためには、健康でいることが一番かもしれません。

編集部:佐藤先生、本日は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。この後、著書を何度も読ませていただき、学びを深めていきたいと思います。

 

さとう なるみ

東京水産大学(現・東京海洋大学)大学院水産学研究科(食品衛生学専攻)修了。東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。農学博士。サイエンスライターとして、生物や食品科学などの分野の記事を多く執筆。明治学院大学、東洋大学非常勤講師。著書に『理学部・理工学部』『理系学術研究者になるには』(以上、ぺりかん社)、『お酒の科学』(日刊工業新聞社)、『あっと驚く科学の数字』(共著、講談社ブルーバックス)など。

 

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