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『月刊マクロビオティック』1月号おすすめ記事

 

「発酵の科学」中島春紫氏に聞く

発酵食は安らぎや癒し効果がある

 

 

味噌と醤油

 

編集部:微生物は自然界の循環の役目をしてくれているのですね。
 さて、発酵といえば真っ先に調味料の味噌や醤油のことを思い浮かべます。私どもの料理教室でも味噌、醤油をよく使います。味噌、醤油の発酵について教えてください。

中島:味噌、醤油をはじめ、日本では独自の調味料を多く使っています。大豆を発酵する食品は世界各地でいろいろと使われていますが、麹菌を飼いならすことができたのは日本ぐらいなのではないかと思います。日本を代表する味噌や醤油は麹を使った素晴らしい調味料です。
 味噌と醤油を比べた場合、醤油の方が技術は上だと思います。醤油は蒸し煮した大豆と麦に麹菌を成育させた麹に濃厚な食塩水を加えて長期間発酵・熟成した発酵調味料です。原料の大豆に含まれているタンパク質がほぼ完全にアミノ酸に分解されているのが醤油です。

編集部:醤油はすごいですね。大豆のタンパク質が完全に分解されているのですね。

中島:そうです。全ての醤油がそうではないですが、長期間発酵して作られる伝統製法の醤油は大豆アレルギーの人でも大丈夫というくらいタンパク質が分解されているので、全く別物と言ってもいいほどです。 
 一方、味噌も蒸した大豆を原料にしていますが、味噌は大豆のタンパク質が残っています。

編集部:味噌は仕込む過程で一回「切り返し」をしますが、それ以外はほぼ嫌気性で発酵しますね。

中島:そうです。だから醤油に比べて発酵がゆっくり進むのです。ちなみに、醤油には濃口や淡口(うすくち)があり、味噌も赤味噌や白味噌といった色の違いがありますね。これはどうしてなのか分かりますか?

編集部:仕込み時の原料や分量の違い、熟成時間の違いでしょうか?

中島:それもありますが、科学的にいえば褐色の色がつくのは加熱や長期熟成中に糖分とアミノ酸に化学反応が起きているからです。これを「メイラード反応」といいます。発酵食品の熟成の過程では長い時間をかけてメイラード反応がゆっくり進行し、少しずつ色と風味が増していきます。

編集部:つまり、褐色化していくことがメイラード反応ということですか?

中島:そうです。メイラード反応は発酵の過程だけではなく、私たちの日常にもよく見られるものです。食材の加熱や長期保存により、食材が茶色になり、香ばしい香りが発生して味にコクと深みが生まれるのはメイラード反応が関係しています。玉ねぎを炒めて飴色になるのもメイラード反応なのです。

編集部:そうなのですね。食材が茶色になると聞くと、酸化するのに似ていますね。

中島:メイラード反応によって生まれるものに「メラノイジン」という褐色色素があります。メラノイジンは抗酸化作用と活性酸素除去作用を持つことが知られています。味噌は色が濃いほどメラノイジンが多く、抗酸化作用に優れていると言われています。

編集部:「メイラード反応」、もう忘れることはできません。

 

腸内細菌

 

編集部:腸内細菌の働きについて教えていただけますでしょうか?

中島:腸内細菌は世界中から様々な報告がされていますが、はっきり言えるのは乳酸菌が腸に良い影響を与えているということです。これは間違いないですね。ただ、乳酸菌は腸内に残留するものではないので( 中には残留する乳酸菌もいると言われている)、毎日摂り続ける必要があります。

編集部:乳酸菌は腸内では善玉菌と言われていますね。

中島:そうです。もともとヒトの腸内にいますからね。では乳酸菌のことを少しお話しましょうか。乳酸菌は発酵により糖類から乳酸を大量に生産する微生物群の総称です。乳酸菌と呼ばれる細菌は約200種類が認定されています。乳酸菌は植物の表面や果物、植物の発酵食品などに生息していますが、自ら生き残っていくためのpHを低下させて、
他の微生物を追い払います。
 でも、乳酸菌は酸素に弱いのです。だから味噌や醤油はあまり空気に触れさせないようにしているでしょう?

編集部:たくあんといった漬物も上から重しをしますから、あまり空気に触れませんね。日本には調味料や漬物など乳酸菌の食べ物がたくさんありますね。

中島:もう少し説明しますと、デンプンの質量には酸素が多く、糖分に分解されますね。分解された糖分はグルコースになります。化学式だとC6H12O6 です。タンパク質や脂質となると他の元素も加わり、酸素の割合が減ります。食事に例えると、ごはんと漬物を食べれば乳酸菌が優位になるということです。
 一方、魚や肉類などのタンパク質、脂には逆に悪玉菌のエサになりやすいので、腸内が塩基性に傾いてアミンが発生しやすくなります。アミンの中には発がん性物質を含むものもありますから注意が必要です。

編集部:ごはんをしっかり食べた方がよいということが、化学式からも分かるということですね。

中島:最近流行りの低炭水化物ダイエットは、偏食だと思っています。長い目でみたら体によくないことは明らかですね。
 炭水化物の中には食物繊維が含まれています。食物繊維は腸内環境を整え、便を排出する役目があります。消化しにくい繊維質の成分である程度、便の量も増やさなければなりません。これが少ないと腸での滞留期間が長くなり、腸のためにはよくありません。腸の中の食物繊維が増えると腸の運動が活発になり、いろいろな菌と結びついて便と一緒に排出してくれます。健康でいるためには腸が元気でいないといけないということです。

編集部:食物繊維が足りていないと思っている人にサプリメントは有効なのでしょうか?

中島:サプリメントに頼るより、できれば漬物などがおすすめですね。生野菜で200g摂るのは大変なので、蒸す・茹でるのもいいですが、浅漬けなどの漬物で摂ってほしいと思います。糠漬けや粕漬はその中に野菜を漬け込みますが、これはほとんど日本独自の漬物のスタイルですね。

 

糠漬け

 

編集部:中島先生の著書「発酵の科学」の中でも糠漬けのことが詳しく書かれていましたが、読者の方に少し説明をお願いします。

中島:糠漬けの主力菌はラクトバチルスと呼ばれる乳酸菌です。この乳酸菌は整腸作用が期待できる菌ですが、あまり勢いよく繁殖すると酸味が強くなりすぎ、酸っぱくなります。
 また、酸素に敏感で、酸素があると乳酸発酵が止まります。だから「天地返し」をして酸素を入れ、乳酸
菌の働きを抑えることが必要となります。
 また、糠漬けの表面に白い膜が出ることがあるでしょう? それは産膜酵母で、酸味を低下させ、アルコールを生成して漬物に香りを与えます。しかし、放っておくと産膜酵母が大繁殖してシンナー臭が発生するので、やはり天地返しをして抑えなければなりません。

編集部:私は何度も糠漬けに失敗しています。良いアドバイスをいただけないでしょうか?

中島:やはり1日に1回、夏なら2回は糠床の底から天地返しをしてほしいですね。また、野菜を漬けると野菜から水分が出て糠床がドロドロになり、塩分が薄くなることで腐敗菌が繁殖しますので、10回位野菜を漬けたら水分を捨て、新たに糠と塩を加えるのがよいでしょう。

編集部:糠床に錆びた釘や卵の殻を入れるのは、科学的に正しいのでしょうか?

中島:正しいです。卵の殻の主成分は炭酸カルシウムなので、乳酸が多すぎて酸性に傾いた漬物の中和に有効です。
 それから、唐辛子は香り付けにいいと思います。その他にも地域や家庭によって受け継がれている漬け方があると思いますが、詳しいことはよく分かっていません。まだまだサイエンスが追い付いていないということでしょう。

編集部:糠漬けにはどんな野菜が適しているのでしょうか?

中島:歯ごたえがしっかりした野菜が合います。やはりキュウリ、大根、白菜、キャベツ、カブ、ナス、ニンジンが定番です。野菜には塩味が付き、青臭みが消え、うま味を持つアミノ酸が出ておいしくなります。食べるのは糠床から出したてが一番おいしいです。

編集部:漬物といえば、日本だけではなく、世界各地にもありますね。

中島:世界のその土地の漬物でよいと思います。ドイツの漬物で有名なキャベツで作ったザウエルクラウト(=ザワークラウト)はビタミンCの宝庫です。

編集部:世界的にみても日本はいろいろな発酵食品があって、とても嬉しいことですね。

中島:日本は南北に長く、食も多様性に富んでいます。世界的にみても多くの食材があり、恵まれていると言っていいでしょう。

編集部:昔から伝わる発酵食を大事にしないといけませんね。

中島:世界的に調べられたことですが、1970年〜1980年にかけての日本食が一番いいという報告を読んだことがあります。それより前は塩分が多い食生活で胃がんが多かった。今は、脂質が多く大腸がんが一番多いでしょう。食生活の変化によってがんに罹る部位も変わってきます。

編集部:大腸がんは今一番日本人に多いがんですね。病気についても発酵食でなんとか改善したいところです。

中島:発酵食は安らぎや癒し効果があると思います。世界各地でその土地に根付いた発酵食がありますし、私は海外から帰国したときに味噌汁を飲むとホッとします。ストレスと健康の関係はなかなか科学的に証明することはできませんが、発酵食はストレス軽減効果があると思っています。
 発酵食についてもなかなかサイエンスが追い付いていませんが、逆の見方をすれば、まだまだ未知の世界があるということです。これからももっといろいろなことが分かってくるでしょう。私はそれがとても楽しみです。

編集部:中島先生、本日はどうもありがとうございました。発酵のお話をとても楽しく聞かせていただきました。そして何より食に対する愛情が伝わってきました。最後に、中島春紫先生とのご縁を結んでいただいた、講談社ブルーバックスの須藤寿美子氏に感謝申し上げます。

( ※ )口噛み酒:米などの穀物やイモ類、木の実などを口に入れて噛み、それを吐き出して溜めたものを放置して造る酒のこと。映画「君の名は。」にも出ている。

 

発酵の科学
味噌、醤油、納豆、清酒、酢、漬物、鰹節。微生物を巧みに使いこなし、豊かな発酵文化を築いた日本。多様な発酵食品の歴史をたどりながら、現代科学の視点からも理にかなった伝統の技を紹介。
(「BOOK」データベースより)

中島春紫著/講談社ブルーバックス
1,000円+税
※全国の書店でお求めいただけます。

 

なかじま はるし
微生物学者。農学博士。 明治大学農学部教授。 専門はこうじ菌のタンパ ク質の研究。遺伝子組み 換えなどの食品安全行政 および、高校生の国際生 物学オリンピックにも取 り組む。テレビにも出演。 主な著書に「微生物の 科学」(日刊工業新聞社) など。発酵食品と酒類を こよなく愛している。

 

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