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『月刊マクロビオティック』2021年4月号おすすめ記事

特集「免疫力」
新型コロナウイルスの感染拡大を受けた1回目の緊急事態宣言の発令から1年が経過しました。世界中の研究者や医療従事者の懸命な努力によって、ウイルスの特性、感染拡大のメカニズムが多角的に解明されてきました。ワクチンの研究開発も加速度的に進み、一部の国や地域ではすでに接種の実施が進んでいます。しかし、ワクチンの効果の程度や副作用のリスクについては、まだまだ多くの疑念と不安が渦巻いているのが現状です。感染予防対策も国や地方または個人のレベルでそれぞれに実施され、一定の効果は認められつつも決定的な方法は未だ見い出されてはいません。そうした中、感染または重篤化の予防に、生来人体に備わっている「免疫力」の維持・向上が、最も有効な要件であるとの認識が脚光を浴びています。こうした時にこそ、マクロビオティックの普及をミッションとする当協会としては、マクロビオティックの知恵の結晶とも云える「食養生と手当て法」を広く一般にお知らせする責任があります。今月は薬品に依存することのない「免疫力」の維持・向上に有益な、マクロビオティックならではのノウハウをご紹介いたします。マクロビオティックの知恵がご家族の健康を守り、 微力ながらパンデミック収束への一助となれば幸いです。
@免疫とお腹の関係
編集部
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、「免疫」という言葉をよく耳にするようになりました。本誌でも何度か取り上げていますので、私たちが病気にならないよう、細菌やウイルスなどの病原体から身体を守ってくれる防御システムだということはご存じのことと思います。
免疫細胞は腸に集中
免疫力が高い人ほど新型コロナウイルスやインフルエンザといった感染症にかかりにくくなるということですが、風邪をひきやすくなったりするのは免疫力の低下が関係しています。この免疫力はなぜ低下するのでしょうか?
免疫力が低下する原因は様々ですが、睡眠時間の減少、食生活の偏り、運動不足、疲労、喫煙、過度の飲酒などが挙げられます。また、強いストレスも自律神経のバランスを崩し、免疫力の低下につながるといわれています。
体内の免疫細胞は、7割が腸に集中しているといわれています。食物の他にも様々な細菌やウイルスが口から侵入してきますが、腸が排出しています。これらの病原体にさらされる機会が多いため、腸は免疫細胞の約7割が集まる体内最大の免疫器官とされています。
しかし、腸は免疫以外にも図1のような多くの働きを担う重要な臓器で、どの機能が低下しても病気になりやすくなります。つまり、腸は健康の要なのです。

腸の機能を高めるには?
腸内には100兆個もの腸内細菌が「腸内フローラ」を形成しているのはご存じだと思いますが、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の良いバランスを保つことが重要とされています。
そこでやはり大切なのは食事です。肉や魚、卵、乳製品などに含まれている動物性たんぱく質や脂質の多い食事に偏ると悪玉菌が増える原因になりますが、玄米や季節にあった旬の食材を積極的に取り入れるなど、マクロビオティックの考え方に則った食事をすると善玉菌が増えて腸内細菌の多様性が高まり、腸内フローラが整っていきます。
また、腸の機能を高めるには温めることも有効です。体温が1度上がると免疫力が大幅に上がるといわれています。免疫細胞の約7割が集まる腸を温めることで全身も温まるので免疫力のアップに繋がります。
腸の機能を高めよう!
ここまではマクロビオティックを実践される方はご存じの内容だと思いますが、ここからは食事の実践にプラスするとより効果的な、腸の機能を高める方法をお伝えします。
内臓マッサージ「チネイザン」指導者Yuki☆ 先生からは「免疫力を高めるお腹の手当て」、正食医学講座でもおなじみのマクロビオティック和道を主宰している磯貝昌寛先生からは「身体を温める手当て 生姜湿布」、クッキングスクール リマの角元康代先生からは「免疫力を高める食べ物」をご紹介いただきます。
会員の皆様や読者の皆様が、これからも感染症に負けない高い免疫力でお過ごしいただくための参考になれば幸いです。
A免疫とお腹の関係
チネイザン講師 Yuki☆
手を使う(お手当て)の効用
皆さんは、日頃からご自分の手をどのように使っていますか? パソコンや携帯を打つ手、お料理を作る手、お掃除をする手、子どもを叱る手、なでる手、化粧をする手、ピアノやアートもしかり…。そう、手のひらは私たちの意志そのもの。テレビアニメではよく魔法使いが呪文を唱えて手のひらで癒すイメージがありますが、私たちの手のひらは常に
色々な可能性を持っています。今回は、そんな手のひらを昔から日本に伝わっている「お手当て」の道具として使う「チネイザン」のやり方をお伝えしていきたいと思います。
手のひらには不思議な効能があります。例えば、マッサージチェアでは納得のいくところまでほぐすことはなかなかできませんが、メンタルが落ち込んでいた時などにセラピストからマッサージを受けてみたら自然と心まで軽くなった経験をお持ちの方は多くいらっしゃると思います。手のひらには「ココロ」をほぐす力が潜在的に隠されているのでしょう。
コロナ禍で心身を害している方が激増しています。私のサロンにも日々お腹の不調を訴えて通われるお客様がいらっしゃいますが、原因はストレスといった心理的なものに起因していることが多く、新型コロナウイルスによって「不安・恐怖・怒り」といった3要素をお腹に抱え込む人たちが激増したことは言うまでもありません。今こそ、私たちに古来から備わっているその「手のひら」の力を発動する時がきているのではないでしょうか。
お腹のマッサージ
今回ご紹介するのは古代道教に伝わる「チネイザン( 氣内臓セラピー)」です。内臓と感情が繋がっていて未消化の感情が内臓に蓄積し、氣の流れを乱し、不調を招くとされるもので、私は古来から伝わるチネイザンを現代日本人により合うように改良した現代版のお腹のマッサージを日本全国に伝える活動をしています。ここではYuki☆ 式
チネイザンの方法をセルフと相手に行う方法の両方をお伝えしていきたいと思います。
マッサージ方法
免疫力が低下してしまう一番の原因は「小腸の詰まり」にあります。普段から、健康的なお食事をしている方でも「不安・恐怖・怒り」といった感情は生まれます。それらの感情は日々内臓に蓄積していくので、お腹は当然固くなります。
小腸はおへその真下にあり、手のひらを拡げ、中指の付け根をおへそに置いた大きさが小腸の大きさになります。ここではまず、小腸をほぐすことから始めてみましょう。両手を重ねて、お腹の上で船をこぐように手のひらをゆらゆらと動かしていきます。アロマオイルを入れるとさらに効果的。柑橘系やカモミールなど、胃腸をケアするアロマがおすすめです。小腸ほぐしは3〜5分ほどゆっくりと行ってください。

小腸のチネイザン
次に、免疫力低下の原因となるのは「怒り」です。怒りは血流を悪化させ、自律神経を乱し、活性酸素を生み、結果、免疫力が低下してしまうのです。政府の方針がコロコロ変わったり、日常生活が前のようには行かないことに対する怒りやストレスそのものが免疫力を低下させてしまうのです。そこでチネイザンでは怒りは「肝」に蓄積すると考えており、肝をほぐすことで肝に蓄積した怒りをリリース(消化)できると考えます。
まず仰向けに横になりましょう。肝の反射区(対応するエリアのこと)である右の肋骨の内側に両手を並べて当ててみます。大きく息を吸って吐きながら指を肋骨の内側に差し込みます。差し込んだ指の圧は抜かずにそのままもう一度息を吸って大きく息を吐きだします。その後同じ場所で指をクルクル回してからポンッ! と抜きます。同じ工程を2回繰り返してください。
今回は、簡単な小腸と肝のチネイザンでしたが、これは相手に施すやり方も、自分に施すやり方もほぼ同じです。

肝のチネイザン
食事とセルフチネイザン
「内臓」は命の器です。その器に何を入れるか、その器をどう磨くかで人生の質は変わってきます。免疫力の観点からすると、小腸が免疫力の要ですので小腸を弱らせてしまう食事はなるべく避けてください。代表的なものが精白された小麦粉で作られたパンやパスタ、精白されたお砂糖が入った甘いもの、酸化しやすい油脂で作られたもの、この3つをなるべく毎日の食事から減らしていきましょう。早い方は1週間パスタをやめただけでお腹の状態が良くなったという人もいます。
その逆に内臓に入れてあげたいものの代表は「お味噌汁」です。ここで大切なのは、天然醸造のお味噌と甘味のあるお野菜を使うこと。ダイコン、玉ネギ、カボチャ、キャベツ…コトコト煮たお野菜は、胃腸の最高の薬です。
誰もが持っている手のひらの力を最大限に活用し、新型コロナウイルスに負けない強い心と身体を養っていきましょう!
Yuki☆
クッキングスクール リマ マスターコース修了。一般社団法人「内臓マッサージ協会」代表理事、心理アロマアドバイ
ザー、チネイザンセラピスト育成スクール「たまよろ庵」主宰。著書「気内臓デトックスマッサージ」(KADOKAWA)他。マクロビオティックと温泉をこよなく愛する1児の母。
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