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『月刊マクロビオティック』おすすめ記事
コラム:桜沢如一のコトバに学ぶ
「胎教ー生まれる前の食育が肝心」
日本CI協会刊「マクロビオティック誌」連載
2017年2月号掲載(第77回目)
寺子屋TAO塾代表 波多野毅
「人は生まれる前の280日間に、1個の(150万分の1g位の)最初の受精卵から30億倍に生長し、ついに数兆の細胞になる事を私共は忘れてはなりません。そして、人間の受精卵は280日の間に、生物学的なあら
ゆる進化の段階を通って30億倍の生物(赤ん坊)になるのです。生まれてから十数年もかかってやっと20倍になるだけです。1個の生物の体重が2倍になるのを、仮に生物学的な進化の期間(280日のこと)に、我々の主要な特長や性格が創造されるのです。だから、この生物学的な期間に我々が受け入れる外的、内的の影響は、生後に受ける教育より遥かに重大なものである事は想像されましょう。」(「東洋医学の哲学」)
人間は、受精卵から赤ちゃんとして生まれて来るまでの「十月十日」の間に、バクテリアのような原核生物から原始魚類 → 古代魚類 → 両生類 →爬虫類 → 哺乳類へと繋がる生命の進化の過程を再現している。「個体発生は系統発生を繰り返す」というこの仮説は、19世紀ドイツの発生学者エルンスト・ヘッケルによって唱えられた。
かつて、私も高校の生物の教科書で見たヘッケルの図は、捏造や意図的な見落としがあると指摘され、現代の生物学上の知見から不正確な点があると批判されている。しかし、科学の歴史では、一度葬り去られた学説が新たな解釈のもとに復活することも多い。最新のシステム論などからのアプローチを含め、その真偽の見極めには飽くなき探究心でさらなる議論を待ちたい。
妊娠期間中がその後の人生に多大なる影響を与える実に神秘的な時間であることを鑑み、「いのち」の探求には科学的なアプローチと共に哲学的原理の見解にも耳を傾けたい。東洋医学の胎教の古典といわれる古代中国・前漢の劉向(りゅうこう)著の「列女伝(れつじょでん)」には「邪美を食せず」とある。人体は小宇宙なり。
噛むリズムは、消化器系・循環器系・呼吸器系のリズムに繋がる天地調和の原点だ。
同時に、桜沢は「犬の日の帯も良いことだが、賢い犬のようにペコペコのお腹であるべし」と説く。空腹は幸福の元?
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波多野 毅 /はたの たけし
1962年熊本県生まれ。一般社団法人TAO塾代表理事・熊本大学特別講師。修士論文のテーマは「食の構造的暴力と身土不二の平和論」。鍼灸学生時代、日本CI協会、正食協会にてマクロビオティックを学び、93年Kushi Institute勤務。著書に「医食農同源の論理」「自遊人の羅針盤」など。
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※この記事は「月刊マクロビオティック」で連載しています。