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月刊「マクロビオティック」磯貝昌寛の正食医学

磯貝昌寛の正食医学

 

第115回:食養指導録 夏のデトックス法

 

夏の陽と体の陰

赤道直下に住む人々は呑気でおっとりしているといわれます。一年の中で夏は陽の気が最大となります。陰陽は相補的ですから、環境が陽性になるとそこに生長するものは陰性となります。赤道直下の植物の陰性さが強いのはそのためです。

私たち人間は環境の陽性さに対応するために、陰性な食物をいただいて調和しています。赤道直下に住む人々は、陽性な環境がゆえに陰性をたくさん摂って、おっとりするのは自然なことです。

私たちの体は陰性の要素と陽性の要素をともに蓄えています。夏の陽性な環境下では、陰性なエネルギーがより消費されます。半断食ではエネルギーの摂取を極力抑えます。陽性な夏には陰性のエネルギーを体に入れて調和するのですが、断食や半断食でその陰性なエネルギーが入ってこないため、私たちの体は、蓄積した陰性な要素をエネルギー化するのです。自然とは絶妙にできています。体の中で不要なものからエネルギー化されて排出するようになっているのです。

夏の陽性な環境下では、体に蓄積した陰性な毒素がより排泄されます。特に若い世代は、砂糖や人工甘味料を知らず知らずにたくさん摂って、陰性の毒素をかなり抱えています。

他にも手足の感覚がマヒしたり、悲しい、寂しいなどの精神状態になったりすることも少なくありません。無気力になったり思考停止になったりするのも陰性の排毒反応です。昼夜問わず眠いのも陰性です。

陰性の排毒反応の時、もっとも効果を発揮する食物のひとつに梅干しがあります。そのまま食べてもよいのですが、梅醤番茶にするとその効果はより早いものです。陰性の排毒反応の時には腸が緩んでいることが多いので、葛湯や葛練りに練り梅や梅醤番茶のエキスを添えて食べるのもよいでしょう。梅醤番茶を本葛でとろみをつけた葛入り梅醤番茶も効果的です。

前頭部のみの軽い頭痛は陰性の排毒反応の可能性があります。そんな時には梅干しの果肉をちぎって、痛い部位やこめかみに貼ると知らぬ間に痛みが消えることがあります。

とはいえ、自分自身が排毒反応を迎えると、その反応が陰性か陽性か、自分では判断がつかない、ということが少なくありません。判断力は中庸で最も高い状態ですから、陰陽どちらかに偏った状態では判断力は発揮されないのです。

 

夏の排毒反応の対処法

陰陽の偏りは総合的な判断力を低下させますが、味覚や嗅覚、聴覚などの原始的な感覚はむしろ、敏感になります。敏感になった感覚を統合させ、判断する大脳が混乱しているのが排毒反応時なのです。

陰性の排毒反応時、梅干しなどの陽性食品だけでなく、夏野菜などの陰性食品も必要です。陰性の反応だからといって陽性の食品のみでは、細胞への浸透が弱いのです。

その際にとても大事なのが、味覚を中心とした感覚です。「おいしい」か「おいしくない」かの味覚が体にとっての「合う」「合わない」を示しています。

夏野菜は体に蓄積していた陰性の毒素の入れ替わりを促します。汚いものとキレイなものの入れ替わりを促進するのです。

半断食を初めて行う人は夏から始めるのが合っています。私たちの身体は陰性な要素から排毒されていく性質があります。陰性は遠心力が強く、陽性は求心力が強いのです。食養を始めると、最初に陰性さが出てきます。圧力炊きの玄米やごま塩、鉄火味噌、梅醤番茶がおいしく感じるのは、体に陰性な要素がたくさんあるからです。体に蓄積した陰性の要素は、その遠心性のため体外に抜けていこうとします。断食や半断食をするとその陰性さの抜け方が早く、中庸になっていきやすいのです。

一方で、陽性の毒素はその働きが求心性の強いものですから、なかなか体から抜けていかない、という特徴があります。夏の次には秋や冬がやって来ますから、自然な生活をしていると次は動物性の毒素の排毒が始まってくるのです。春夏秋冬がはっきりしている日本はありがたい風土です。

 

砂浴による排毒法

ある女性から言われた「ものすごい冷え性なのに今年の冬はまったく冷えを感じなかった」という言葉が忘れられず今も記憶に残っています。この人は前年の夏に砂浴合宿に参加された方でした。海岸の砂浜で穴を掘って体全体を埋める砂浴は、伝統的な解毒法( デトックス法)です。

人間の呼吸数は一分間に約18回といわれます。穏やかな日に海が波打つ回数も18回ほどだそうです。実際に海岸で波音を聞いていると何ともいえず気持ち良くなるのは、波の周波数と体の周波数が共鳴するからだと思うのです。砂浴中は砂の中に潜りながら、全身を通して海の波動を感じるのです。まるで胎児が母のお腹の中で母の呼吸を感じていたかのような感覚なのかもしれません。

砂の中に潜っているとその温かさと心地よさから多くの人が眠りにつきます。生姜シップで温浴している時も多くの人が眠りにつきますが、副交感神経を活性化させるのに最もよいのは深い眠りなのです。

温熱効果を利用した砂浴は真夏に行うのが基本です。燦燦と降り注ぐ太陽光で温められた砂の中で、眠りにつくほどリラックスしていると、多くの場合、汗をたっぷりかきます。この汗がデトックスになるのです。その時の体調にもよりますが、重たい病気の人が入った後の砂や体から臭いにおいが出てくることも少なくありません。

体の深部から温められて、免疫の本幹である腸が活性化して肌もキレイになります。ガンや糖尿病などの生活習慣病、リウマチ、膠原病、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患も、免疫の異常からくる病気には基本的に体の深部を温める温熱療法は大きな力になります。

また、砂浴後は海水浴はしない方がいい、と昔はいわれてきましたが、現代は逆に海水浴とセットで行った方が解毒が促される人が増えてきているように感じます。現代では毒素の蓄積が戦前の人たちからは想像できないくらいに増えているからです。そのため和道では入浴は積極的にしてもらっています。

砂浴と海水浴は、ある意味の温冷浴になって代謝を高めることがあると感じています。これも味覚によるおいしい」ことが体に合っているように、砂に入って心地よい、海に入って心地よいことが大切です。

砂浴後に浮腫みが消えたという人も少なくありません。温かい砂による温熱効果に加えて、砂の程よい重みが血液循環を活性化させているからだと思います。砂に潜った直後から手足からドクンドクンという拍動を感じたり、チクチクした虫に刺されているような感じがするのは、砂による圧力が肌や血管を刺激しているからなのです。砂浴は生姜シップや生姜風呂による温かさと鍼灸治療による鍼や灸の後の感覚が入り混じったような感じです。

私は毎夏、千葉の海岸で砂浴指導をしています。連日、太陽のエネルギーにさらされて砂浴指導をしていると真っ黒に焼けます。これが夏の自律神経鍛錬法になるのです。寒い冬でも寒さを感じなくなった女性も、真夏に太陽のエネルギーを十分にいただいたからに他なりません。春夏秋冬それぞれの季節を堪能することが自律神経を整える上で最も大事なことではないでしょうか。

 

プロフィール

磯貝昌寛/いそがい まさひろ

1976年群馬県生まれ。15歳で桜沢如一「永遠の少年」「宇宙の秩序」を読み、陰陽の物差しで生きることを決意。大学在学中から大森英桜の助手を務め、石田英湾に師事。食養相談と食養講義に活躍。「マクロビオティック和道」主宰。

 

 

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