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Home月刊マクロビオティック > 重藤誠「何をどのように食べるか?」

月刊「マクロビオティック」おすすめ連載

 

Vol.2:人はなぜ太るのか?

世界的に肥満が拡がっている

最近、世界の3人に1人が太り過ぎであることが、肥満に関する世界的な調査の結果、明らかになりました。推定で過体重(BMI≧25)の人は世界全体で約22億人おり、肥満(BMI≧ 30 )だと7億1200万人存在します。これは、子どもも含めての数字で、成人に限れば実に4割が過体重のカテゴリーに入ります。世界保健機構(WHO)は、肥満の抑制を最優先課題として挙げていますが、多くの研究者は悲観的で、今後も、肥満が拡がっていくことが予想されています。

それにしても、なぜ、人類はこんなにも太ってしまったのでしょうか? 論文の著者らもそう言っているように、ジャンクフードと清涼飲料水が一因と考えて間違いないでしょう。

ハンバーガー、フライドチキン、油で揚げたスナック菓子は、体に悪いとされる酸化した油と塩分を大量に含んでいます。脂肪は、自然界では貴重な栄養素ゆえ、脳は「おいしい」と感じるわけですが、高脂肪食は麻薬や覚醒剤並みの依存性があり、脳の食欲中枢を狂わせることがわかっています。しかも、経済性を優先して古くて粗悪な材料を使っているため、ビタミンやミネラルなどの栄養素があまり含まれていません。満足感は食べている間だけで、いくら食べても重要な栄養素は満たされず、体脂肪ばかりが増えていきます。

噛むことなく、短時間に大量の砂糖を口から流し込むソフトドリンクも、脳を満足させることなく、栄養素はむしろ消費させる方向に作用するため、より大きな問題になります。

アメリカ、イギリス、メキシコなどの一部の国では、砂糖税( sugar tax )が導入され、ソフトドリンクの消費を抑制しようとしています。砂糖も脂肪同様、麻薬や覚醒剤に匹敵する依存性があり、健康に有害であることが明らかになっていますので、政治的英断だと思います。日本でも検討されるべきですが、企業が広告費により、テレビをはじめとしたメディアを押さえているという社会構造上、議論すらされる気配がありません。

 

日本人は食べ過ぎに弱い人種

そんな日本ですが、世界の中でも肥満度は低く、BMI≧30の人口比率が4・5%と増加傾向ながら、先進国では最低になっています。アメリカのそれが31・8%であることを考えるとずいぶん違いがあります。この原因のひとつとして、人種差が挙げられています。

欧米と比べ、アジア人のBMIは低くなっており、その要因としてインスリン分泌能力の差が挙げられています。インスリンは、食事から摂った糖を細胞内に移動させ、利用できるようにさせます。この作用が不足した状態が糖尿病です。インスリンが造れなくなる1型糖尿病では、食べても細胞に糖を取り込むことができません。糖が利用できずに尿から出ていってしまうため、外からインスリンを注射しないと体はどんどん痩せ細り、最終的には死んでしまいます。

逆に、インスリンを無尽蔵に造ることができれば、理論上は糖尿病になることはありません。西洋人はアジア人と比べてインスリン分泌能力が高く、糖を体に取り込む能力が非常に高いのです。つまり、食べ過ぎた場合でも、余分な栄養を体脂肪として蓄える( 太る)ことができるのです(この点だけを捉えて、インスリンを肥満ホルモン呼ばわりする人がいますが、あくまでインスリンの作用のひとつに過ぎません。インスリンは食欲を抑える作用などもあり、インスリン効果が落ちることで食べ過ぎが起きることがわかっています。人間の体というのは、そんなに単純ではありません)。

一方、インスリン分泌能力が低い日本人は食べ過ぎに弱く、太る前に糖尿病になってしまいます。これは、数千年にわたり、飢餓に適応してきた結果と考えられます。

肥満や病気になりやすいかどうかが、胎児期の母親の栄養状態で変化するという仮説があります。実際、妊娠中に太り過ぎた女性や、妊娠糖尿病を患った母親から生まれた子どもは、成長してから肥満になる傾向があることがわかっています( 逆に、妊娠中の低栄養が肥満や高血圧を増やす可能性も指摘されています。いずれにしても、妊娠中の食事は細心の注意が必要です)。出産時に母親から受け継がれる腸内細菌などが一因と考えられていますが、明確な理由はよくわかっていません。ジャンクフードや抗菌薬の乱用で、腸内細菌が影響を受けている可能性も考えられます。ともかく、欧米では、数世代前から過栄養状態であったため、インスリン分泌能力が高く、糖尿病になりにくいかわりに、かなりの大きさまで太ることができる才能を持っているわけです。直近の数十年で近代化した、日本を含むアジア人は、まだ一定以上太ることができない( 太る前に糖尿病になってしまう)人がほとんどです。しかし、過栄養状態で1〜2世代経過した現在、アジアでも確実に肥満が増えてきています。肥満だけの場合と糖尿病を合併した場合では、起こってくる病気の次元が違いますので、過栄養状態に「適応」してきているという見方ができます。長らく飢餓に適応してきた人類ですが、数十年の単位で体質が変わってきていることになります。


参考文献:The NEW ENGLAND JOURNALof MEDICINE
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1614362#t=article

 

プロフィール

重藤 誠/しげとう まこと

医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。亀田総合病院、オックスフォード大学正研究員などを経て、2016年9月に開院。GLP-1に関する論文が国際科学雑誌に掲載されるなど、業績多数。国立滋賀医科大学の客員講師も務めている。
シゲトウクリニック:http://shigeto-cl.com

 

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