【ジャーナルWEB公開記事】2024年夏号「海の向うから」
第5回|パリ
野田 清美
農業大国の食への意識の変化
前回は、私が住むニューヨークのお話をさせていただきましたが、今回はところ変わってヨーロッパ、パリへ旅して体験した食リポートをお届けします。フランスは農業大国ですから、都会のパリでも豊富なお野菜と食材を手に入れることができます。オーガニック野菜や自然農法も知られるようになって、安心、安全な食を求める人が増えた中で、食の自由選択、多様性を感じました。昨年11月の初めに訪ねたパリは、コロナ禍を経て、レストランも様変わりしていて、健康を意識した食がより注目されるようになってきた気がします。
フランス料理と聞くと今までは、コッテリとした乳製品が入ったソースやチーズ、肉加工品が主流だったと思いますが、その頃と今とでは随分と様変わりしました。ニューヨーク同様、大抵のレストランでは最後に(V)と表示される、ベジタリアンやビーガンに対応するメニューになっていますし、それは美術館のカフェなどの観光客が多い場所でも同様です。オーガニック食品を使っている表示も記載されるようになりました。
和食に注目が集まるフランス
日本では、Macrobioticを「マクロビオティック」と発音表記しますが、実はこれは桜沢如一先生が最初にフランスに渡り普及した歴史から、フランス語発音が主流になった所以で、アメリカ発音になると、マクロバイオティックとなります。フランスでは長くマクロビティックの普及に尽力している方々もおられるのと同時に、日本食には非常に関心が高く、たとえば、コロナ禍で日本への渡航が困難になったのがきっかけとなり、大型日本食料品店を新設されたフランス人経営者の話を聞きました。「iRASSHAi」という店名で、ここでは、安全な日本食材を幅広く取り揃え、オーサワジャパンの食材も購入でき、選択肢もエコを考えて提供されているそうです。フランスに来ると生活の中にエコロジーな暮らしが根付いています。できるだけ廃棄物が出ないように、パッケージも簡素だったりリサイクルができていますし、量り売りが多く、エコバックも当たり前のようになってきています。また世界最古のデパート、ボンマルシェの高級食料品エリアには、マクロビオティック食材も扱うクリアスプリング社の日本食材が肩を並べていました。
マクロビオティックの実践が容易な街
私は今回、ロンドンからユーロスターという高速列車でパリの北駅へ着いたこともあり、パリ10区はオリンピック開催に向けた都市再開発の最中であることも感じました。新しい店が増え、工事中のエリアも多かったように思います。滞在中このエリアを歩いて観光していた折、生協のBiocoop のLancry 支店が、大通りにあり訪ねる機会がありました。冒頭でお話したお野菜の豊富さや多様性とパッケージもとてもおしゃれで、旅先の食料品も調達することができました。今回もマクロビオティックを実践していても楽しみながら、そして安心して旅ができる嬉しさを感じることができました。この10区には、いくつもビーガンレストランがあり、スーパーフード食材をメインに販売もしている「Sol Semilla」で、今日の定食というランチもいただきました。このレストランは、ローフードを主体にしていることもあって、キヌアやえごま、お野菜が繊細なスパイスで味付けされていて、素材自体の旨味も味わえるプレートでした。食後にはガラナの種子を砕いて飲み物にしたものをほんの少量デザートにいただいたのですが、アマゾン原産の強壮剤とも言われるこのドリンクは、滋養強壮、疲労回復に効果があるそうですが、マクロビオティック的には遠くアマゾンのエネルギーに満ちた極陰のドリンク。カフェインやタンニンの含有量も多いそうで、体がびっくりし、熱くなるような感覚と頭が冴えるような、本当に強壮剤らしい体感がありました。陰陽を知っているからこその、楽しい旅の体験でした。
懐の深い多様性
今回はもう一つ訪問を楽しみにしていたお店があります。それはセーヌ川左岸のおしゃれなサン・ジェルマン・デ・プレ地区にある1979年創業の「GUENMAI」です。私は2019年にパリを訪ねていますが(その際の訪問をYouTube動画にしています)コロナ禍の厳しい状況も乗り越え経営を続けておられました。自然食材やサプリメントを販売する中、マクロビオティックレストランが奥にあり、以前と変わらぬ様子を見ることができてとても嬉しい気持ちになりました。
店内は平日にもかかわらず男女問わず幅広い年齢層の人々で賑わっていました。日本でもお馴染みの曜日ごとに替わる定食スタイルもそのままで、素材の旨味と甘味を感じる美味しい野菜料理をいただきました。オーナーと思われる女性も変わらずお元気で、店内をおしゃれなブーツを履いて闊歩されていました。ちょうどこの日は、白身魚が蒸されたお魚の日だったので、お野菜が彩り豊かに並んだランチをオーガニックの地ビールと一緒に味わいました。最後は食感も楽しいアーモンドとリンゴのタルトでした。フランスを観光し自由に旅していても、マクロビオティックという選択肢があり、懐の広い多様性が受容され、楽しく旅のできるパリの街をご紹介させていただきました。
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著者プロフィール
野田清美/のだ きよみ
ニューヨーク大学卒、2007年からマクロビオティックを伝える講師として、長年ニューヨークを基点にお料理教室や講座を世界各地で開催するも、コロナ禍からYouTubeに挑戦して、九星気学を中心に目に見えないエネルギーを感じ取り、大気の流れを知って人生を謳歌する術を伝える発信をはじめる。マクロビオティックのお料理配信や理論もセカンドチャンネルで発信し、誰にでも取り入れてもらえる「Bio」と表示された商品の陳列 よう心がけながら活動中。
☆キヨミのニューヨーク!スピリチャル九星気学
https://www.youtube.com/channel/UCCaWe8KNhfkOmWKDsB_tphA
☆キヨミンヌのNYライフ
https://www.youtube.com/channel/UCmq9PDM_1fJ1RyJlYZ2Mfhw