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【第1回】資料で振り返る桜沢如一の思想と生涯

※月刊「マクロビオティック」2021年1月号より転載
※第27回以降は「マクロビオティック ジャーナル」にて連載中

第1回:思想と生涯を振り返るにあたって

ナビゲーター:高桑智雄(桜沢如一資料室室長) 協力:斎藤武次、安藤耀顔

2020年10月18日の桜沢如一127回目の誕生日にあわせて開催されたスライドショー「写真と資料で振り返る桜沢如一の思想と生涯」は、昨年のコロナ禍で8ヵ月の活動休止を余儀なくされた桜沢如一資料室の活動再開にあたって、あらためて資料室所蔵の写真や資料で桜沢の思想と生涯を振り返り、今後の整理・研究活動の方向性を見定めていきたいという主旨で企画されました。

そして、月刊「マクロビオティック」は今号で1000号に到達しました。冒頭の新年のご挨拶にもありますとおり、本誌は1948年8月に「世界政府」というタイトルの小冊子として発行され、第2号からは新聞形態として、第300号からは月刊雑誌「新しき世界へ」となり、1995年4月、第691号より「Macrobiotique」と改題され、1000号の現在へと至っています。

桜沢は生涯「コンパ」や「サーナ」といった数々の雑誌を創刊、編集してきました。月刊「マクロビオティック」はその中でも最長を誇り、唯一生き残った桜沢の想いを現代に繋げる現役の機関車です。そんな本誌が1000号という大台到達したのを記念して、誌面上でもあらためて写真と資料で桜沢如一の思想と生涯を振り返り、未来へマクロビオティックを伝えていく意義を読者の皆さんと考えるきっかけになればと、連載を開始させていただきます。

「新しき世界へ」478号に桜沢如一十周年記念として掲載された高祖英二文献は、後の桜沢研究の基礎的資料となった。
この特集は「ジョージ・オーサワ アルバム」として小冊子になって配布され、高祖略年譜データは、資料室HPにも掲載されている

桜沢の思想と生涯を振り返るにあたって

2011年に活動を開始した「桜沢如一資料室」には、桜沢如一の蔵書や遺品、写真、メモ書き、書類など( 妻の里真が桜沢の死後30年、桜沢の書斎をそのままにしていたもの)が、膨大に残されており、これらの第一次資料が桜沢の思想と生涯を研究するための貴重なソースとなります。しかし、これらの資料はいまだ未整理の状態で、すべてを紹介することはできません。

そこで、先行研究である1976年4月号の「新しき世界へ」に発表された高祖英二氏編集の「桜沢如一の略年譜」及び「著作年表」を追う形で、幼少期・少年期(1~20歳)、青年期(21~34歳)、壮年期(35~47歳)、中年期(48~60歳)、老年期(61~68歳)、晩年期(69~74歳)の6つのカテゴリーに分け、それぞれ関連する写真や資料を紹介していきます。

解説に関しては右記の先行研究書を参照しながら、ナビゲーターである高桑智雄の私見も加えていきます。また、今回誌面連載に際しては、現役で第一線の桜沢研究者で資料室のご意見番でもある斎藤武次氏、安藤耀顔氏のお二人に協力していただき、特に45年前の高祖英二氏の略年譜データには、お二人の最新の研究結果でのアップデートを試みています。また、その他、思想解釈にも重要な論考を参考文献として寄せていただいています。

【先行研究書】
「マクロビオティックの世界観 巻1・2」斎藤武次/2020年・あうん舎
「食生活の革命児」松本 一朗/1976年・地産出版
「桜沢如一の自由人思想に学ぶ」松本 幸夫/1998・BABジャパン
「桜沢如一。100年の夢。」平野 隆彰/2011年・アートビレッジ

時代背景を考慮する

桜沢の思想と生涯を振り返っていく上でとても重要なのが、桜沢の生きた時代背景です。そもそも私たちが今生きている時代と桜沢が生きた時代は大きく異なります。「無双原理」や「宇宙の秩序」など時代を超えて共鳴する思想体系を築いた桜沢ですが、その過程には、その時代背景が大きく影響しています。

特に桜沢が生まれた1890年代~1960年代は空前の世界戦争の時代です。避けることのできない火の粉をかいくぐり、時代と真正面からぶつかり合いながら形成された思想(実践哲学)であることを理解することが大切です。そこで今回は、略年譜と共にその時起こった出来事の年譜も参考資料として掲載していきます。

桜沢の人生と戦争
1893年(明治26年)如一誕生 
1894年(明治27年)2歳日清戦争開戦
1904年(明治37年)12歳日露戦争開戦
1914年(大正3年)22歳第一次世界大戦勃発(~1918年)
1937年(昭和12年)45歳日中戦争勃発(~1945年)
1939年(昭和14年)47歳第二次世界大戦勃発
1941年(昭和16年)49歳太平洋戦争開戦
1950年(昭和25年)58歳朝鮮戦争勃発
1960年(昭和35年)68歳ベトナム戦争(~1975年)
1966年(昭和41年)74歳 永眠 

人間、桜沢如一を感じる

日頃私たち桜沢如一の思想に魅了された者たちは、得てして桜沢の華々しい活躍というオモテの側面にしか目が行きません。しかし、桜沢は決して聖人君子としてその思想を確立してきたわけではありません。幼少期の母の死、少年期の病気や青年期の失業、心血を注いだ団体からの追放、何度かの結婚の失敗、3人の子どもの死など、およそ順風とは言えない困難の連続からもがき苦しみ、時には現代では理解されないような行動や思想の展開もしてきました。そういったウラの側面からも目をそらさず、陰陽両面で人間、桜沢如一を感じとることが大切です。

また、この連載で綴られることは決してすべてが真実とはいえません。「ノン・クレド!」の精神で、この連載から読者の皆さん自身が桜沢如一の探求を始めてくれることを期待しています。

 

最新回は「季刊マクロビオティック ジャーナル」連載中

著者プロフィール

高桑智雄/たかくわ・ともお

桜沢如一資料室室長。
1970年生まれ。2001年に日本CI協会に入社し、桜沢如一の陰陽哲学に感銘を受ける。
故・大森英櫻のアシスタントを担当した後、フリーランスとして独立。
2011年より桜沢如一資料室の立上げ、運営に携わる。
編集・執筆に「マクロビオティックの陰陽がわかる本」「マクロビオティックムーブメント」」など。2015年発行の人気書籍「マクロビオティックの陰陽がわかる本」の編集者であり、 月刊マクロビオティック・コラム「Café de Ignoramus」連載中。

高桑智雄

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