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【ジャーナルWEB公開記事】2024年冬号 「プロフェッショナル メニュー」第7回|ゴマクロ サロン

ゴマクロ サロン

※本記事の内容は2024年9月21日現在のものです。

第7回|ゴマクロ サロン

取材・文/篠崎 由貴子

京都市中京区にある「gomacro Salon(ゴマクロ サロン)」では、ごま製品を手がける「山田製油」が母体となり、「食」の安全や健康に配慮した複合的なサービスを行なっている。1階のカフェで提供しているのは「goma」と「macro」を掛け合わせたオリジナル料理の数々。今回は営業部長の千 裕ひろこ子さんに、サロンオープンのきっかけ、現在の取り組み、未来への想いなどをお訊きした。

ええもんつこおて うまいもんつくる

「山田製油」とマクロビオティックは切っても切り離せない繋がりがある。体が弱かった創業者の山田豊氏が桜沢如一と出会い、穀物や野菜、海藻などを中心とした玄米菜食を取り入れたことで健康を取り戻したのだ。桜沢に感謝の気持ちを伝えたところ「山田も世のため人のためになる食品を作ってみないか?」と勧められて始めたのが「ごま油」づくり。現在は3代目の山田康一氏が初代の想いを受け継ぎ、伝来の製法で作られた数々のごま製品を提供している。

「ごまは化学溶剤を使って油を抽出すると、含有するほとんどの油分(全体の50%)を油にすることができますが、弊社は昔ながらの圧搾法を採用し、25%~30%だけを油にします。ということは、抽出法を採用している他社と比較すると1kgのごまから製品化する油の量が倍違うことになります。

サラリとしていて香りの良い油は雑味がなく、そのまま飲めてしまうほどおいしいです。また、搾った後のごまにもまだ美味しい部分が残っているので、ふりかけやスイーツに加工することができるのも大きな特徴です。手間もコストもかかりますが、『最高の製品」』を提供したいという想いは今も昔も変わりません」

サロンが開設されたのは2015年。千さんが子育てを通して感じてきた様々な想いと「山田製油」の理念がコラボレーションしてスタートした事業だという。

「昔は親族や地域社会も子育てに大きく関与していましたが、現在は家庭を中心とした育児に変化しています。親同士が情報交換をしたり助け合う機会が少なくなり、子育てをする親が孤立していく傾向にある状況下で育児をしてきた経験から、地域コミュニティの再生が必要であると考えていました。企業規模や目先の利益を追求するのではなく、自社の事業が『世のため人のためになるか』を考えて経営を続けてきた社長の山田にコミュニティ・ビジネスの起業提案をしたところ、お互いのビジョンに親和性が生まれたことがきっ
かけとなり『山田製油』に入社し、サロン開設に至りました」

ゴマクロ サロン

オリジナル料理の数々

サロンのコンセントは「未来ある子どもたちと育てるお母さんを守る」。食の安全や環境に関心を持っていただくための取り組みとして、植物性の食材を使った料理教室や食と身体をテーマとした実生活に役立つ体験型ワークショップを開催してきたそうだ。カフェで提供している料理には「山田製油」のごま製品がふんだんに用いられている。

「食チーム・CHIE’S KITCHEN代表、クッキングスクールリマ師範科修了の廣瀬ちえさんに料理監修をお願いし、マクロビオティックの考えを取り入れた料理を提供しています。旨味調味料などの添加物は使用せず、農家さんたちが大切に育てた野菜とごまの創作料理を手作りで提供しています。現在調理を担当しているのは経験豊富な女性スタッフで、味は優しく見た目も美しいお惣菜の数々を作ってくれています。またすべての料理にはごま製品を使っているので、ごまの味と香りを楽しむことができます」

白ねりごまに豆乳と数種類のスパイスをブレンドした「まっ!白カレー」は定番の人気メニュー。盛り付けられた季節の野菜は自社製品の「エキストラバージンごま油」で素揚げしているそうだ。

「白ごまを焙煎せずに搾ることでごま本来の風味を最大限に引き出した油で揚げています。焙煎した油に比べて甘みがあるのが特徴で、生のまま召し上がるも良し、炒めものや揚げものとの相性も良いです。付け合わせのサラダにもごまを使ったドレッシングをかけてお召し上がりいただいています。味のアクセントとして切り干し大根などの副菜を添えることも多いですね。

ゴマクロ サロン

4種のお惣菜が付いた『gomacro 坦々麺』もファンが多い一品です。夏に提供している冷たい麺は豆乳に味噌と白ねりごまを加えたスープがベースで、冬の温かい麺には昆布としいたけでとった出汁を少量加えています。トッピングするごまも季節によって使い分けているんですよ。ねりごまの中に麺が入っているの?というくらいごまを感じられるのですが、重くないので『他では味わえない一品』とリピートされるお客様も多いです。

ゴマクロ サロン

もちろん、ドリンクやデザートにもごまを使っています。『ごまフォガード』は白ねりごまに豆乳と自然由来の甘みを加えた自家製アイスにエスプレッソをかけてお召し上がりいただくのですが、味の変化が楽しめるよう、お好みで金ごま油をかけることもできるので季節を問わず好評です。

ゴマクロ サロン

今日までこれらの料理に携わっているスタッフですが、最初からうまくできていたことではなく、研修期間に何度も試作や自己研鑽をしています。また経験を重ねた今日でも時に盛り付けした料理をSNS で発信して客観視することで、お客様に喜んでもらえるお料理やサービスを考えてくれています。私自身も試食もしますし、意見交換やアドバイスをする機会も頻繁に設けています。言われたからやるのではなく、自分がどうしたいのか、何を求められているのかを広い視野を持って感じられるようになることは、調理においても接客においても重要なことだと思っています」

時代の変化

1日の来店者数は平均50名ほど。14席という決して多くはない席数ながら、6時間ほどの営業時間のほとんどがお客様で賑わっているそうだ。

「当初は、近隣の方やお勤めの方、京都観光の方と様々で、比較的女性が多いようでしたが、コロナ以降は、健康的な食事を意識される傾向があるようで、男性おひとり様での来店も見受けられます。中には食材や調理法について尋ねられる方もいらっしゃいます。植物性の食材だけで調理していることをお伝えすると、驚かれる方も少なくありません(笑)。また、近年では京都という土地柄、ベストシーズンの春と秋は海外からのお客様が7割を占めます。大半はベジタリアンの方々です。周辺にもベジに対応した料理を提供しているお店もありますが、google やSNS で検索され期待感を持って来店くださいます。時にホテルからの送客もある中で、京都に滞在期間中、毎日来店されるお客様もおられます(笑)。

10年目を迎え、国内外からたくさんの方にご来店いただけるまでになり嬉しく感謝している一方で、課題もあります。一つは料理に対し、アレルギー対策や宗教上の理由で、ある種の材料を抜いて欲しいというものです。できるだけお応えしたいとは思っていますが、ブイヨン、調味料に含まれる素材はその場で取り除くことが困難です。美味しく召し上がっていただきたく創意工夫したお料理からそれらを除くということに躊躇することがあります。とはいえ、口にしたら健康を害してしまう人がいるのも事実なので慎重な対応が必
要になります。今はそうしたケースでは、使用している食材や調味料すべてを開示して自己責任でお召し上がりいただくようにしています。

もう一つは言葉の壁ですね。もちろん英語のメニューはありますし、通訳アプリなどを介して会話が成立することがほとんどなのですが、中には何語かもわからない国の人もいるので…。ゴマクロ サロンが国際交流センターになった? と感じることもたびたびあります(笑)。先述の通り、ゴマクロ サロンがコミュニティであると考えているので、スタッフにはお客様と積極的に話して欲しいと伝えてきました。個々の適性もありますが、オープン当初はお客様の年齢層が高く思ったようにはできませんでしたし、現在は言葉の壁を感じることもあります。しかし、10年という歳月が経過した今日に、スタッフが常連の方や観光の方たちと適切に会話をしている姿、また身振り手振りでアプリを活用しながら海外の方と会話をしている様子を目にすると、とても嬉しい気持ちになります。それらお客様との会話から感じえた要素がお店の雰囲気づくりに影響しスタッフもお客様も居心地の良い場所になるのだと信じています。結果、ゴマクロ サロンがコミュニティとして機能しているのではないかと思います」

ゴマクロサロン

サロンの2階では様々なワークショップやセミナーを随時開催している

受け継がれる想い

物価高騰の波は、ごまの仕入れ値にも大きな影響を及ぼしているという。ここ数年に至っては2〜3倍にも跳ね上がったと話す千さんは、製品の品質を維持するために様々な検討を重ねているそうだ。

「日本で流通しているごまの99%は海外から輸入されています。ごまのルーツはアフリカで栽培には暖かい地域が適しています。日本では、鹿児島の喜界島をはじめ暖かい地域で栽培されています。近年では気候変動や高齢化により国産の収量は減っています。また、海外でも金ごまの主産地であるトルコの大地震の復興やアフリカの国々での内戦、治安悪化から流通に影響を及ぼしています。また、デフレ下にある日本では高い原料が買えないにもかかわらず、品質の要求が高く、中国や韓国から『買いまけ』しているのが現状です。当社だけでなく、輸入作物を主原料としているメーカーは常に世界情勢を把握する必要があります。このような状況下において、当社も品質の高いごまの仕入れには苦戦を強いられています。『ごまかしなしのごま油を作り続ける』ためには、品質の良いごまを仕入れることが何より重要です。近年の原材料の高騰により価格改定せざるを得なかったことは苦渋の決断でしたが、私たちの想いに賛同してくれるお客様が居てくださることに心から感謝しています。

桜沢如一氏から初代山田豊が引き受けた『世のため人のため』という想いは、創業から90年経った今でも色褪せることなく受け継がれています。今後は私たちと同じようにお客様の健康を願いながら信念を持って製品づくりに取り組んでいる人たちとコラボレーションができたら嬉しいです。『ゴマクロ サロンの食』を通した発信がきっかけとなり、健康で笑顔溢れる未来を創造していきたいと思っています」

ゴマクロサロン

1階には「山田製油」のセレクトショップも併設

※本記事の内容は2024年9月21日現在のものです。

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INFOMATION

住所:京都市中京区神明町67-3 (御池新町通り南東角)
TEL:075−257−5096
営業時間:ショップ 11:00~18:00
カフェ 11:30~18:00( L.O.17:00)
定休日:月曜日
※料理の価格や料理教室、講座などの詳細は下記よりご確認ください。

gomacro Salon(ゴマクロ サロン)
http://gomacro.jp/cafe/

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