【WEB限定記事】第4回マクロビオティック研究大会レポート
10月19日(土)に日本CI協会セミナールームにて、桜沢如一生誕記念「第4回マクロビオティック研究大会」が開催されました。
今年から「桜沢如一研究発表大会」から、「マクロビオティック研究大会」へと大会名を変更し、桜沢思想だけでなく、より広範にマクロビオティックの研究や普及活動を発表・報告できるようになりました。
事前申し込みで160名も登録がある中、前半は共同主催である正食協会推薦発表者の十代熱美氏と橋本祐明氏が登壇し、後半は日本CI協会推薦発表者で、桜沢如一資料室のメンバー村井友子氏と高桑智雄室長が登壇しました。また、資料室の活動報告やポルトガルやイタリアでの若い世代の活動などの紹介もあり、バラエティーに富んだ内容の大会となりました。
あなた自身が一番楽しんでいますか?
トップバッターの十代熱美氏は、正食クッキングスクール指導員で、建設会社に38年勤務しながら、マクロビオティックの料理と魅力を伝える活動をしています。
昨年の第3回での安藤耀願氏の発表「Can you entertain?の最重要性」に衝撃を受けて、自分なりに桜沢思想をまとめて魅力的に人に伝えたいと登壇してくれました。今回は「自由に生きる」ための桜沢思想の要点を、豊富な文献から引用をし、WHOの憲章やマズローの心理学との対比や独特のスピリチュアルな感性での解釈など、とても現代的な解説をしてくれました。
十代氏がマクロビオティックと出会って、桜沢の思想をかみ砕いて行く中で、「何があっても大丈夫!」という心境になり、「自由に生きる」ための確信を得ていく道筋が見えて、まさに食を通じて身体から精神へ世界を広げるマクロビオティックの神髄を語ってくれました。
サラリーマン管理職のマクロビオティック有効活用事例
2番手の登壇者である橋本祐明氏は、上場企業に34年間勤務しながら、2018年に正食クッキングスクールの師範科を修了した異色のサラリーマンです。
今回26年の海外勤務の経験の中で、2020年1月からの3年間シンガポールに単身赴任をした時のマクロビオティック実践報告及び、サラリーマン管理職として活かされたマクロビオティックのフレームワークについて報告してくれました。
スーツにネクタイといういかにもサラリーマン的な服装で登壇した橋本氏でしたが、その確信を持った雄弁な語り口、視聴者をリラックスさせるウィットにとんだプレゼン力は、どこからどう見てもただのサラリーマンではありませんでした。
シンガポールという南国で日本の食材が手に入らない状況や会社での付き合いなどで身土不二、一物全体といっていられない状況で、最終的に出来ることは陰陽の調整だけと語った橋本氏。
状況によりこだわれる時はこだわるし、こだわれない時は陰陽で調整するというバランス感覚は、現代社会でのマクロビオティック実践に大いなるヒントを与えてくれました。
南米マクロビオティックのルーツと変遷を考える
後半最初の登壇者である桜沢如一資料室で司書ボランティアとして活躍中の村井友子氏は、長年南米との縁があり、南米マクロビオティックと日本の懸け橋になるべく日夜活動しています。今回はその活動の中で、特にアルゼンチンにフォーカスした南米マクロビオティックのルーツと変遷の考察を発表いただきました。
桜沢如一が唯一訪れなかった南米大陸でのマクロビオティックの変遷から、アルゼンチンマクロビオティックを築いた主要人物へのインタビュー、そして現在その活動を受け継ぐ旗手の紹介など、実際に現地を調査したフィールドワークが土台となっているため、そのリアルな情報の豊富さから、視聴者をぐっとアルゼンチンに近づけてくれる発表でした。
マクロビオティック思想と東洋思想のベクトル差
そして最後は、第1回から連続して登壇をしている桜沢如一資料室室長である高桑智雄氏。今回は「マクロビオティック思想と東洋思想のベクトル差」と題し、桜沢如一の「無双原理」「宇宙の秩序」と東洋の伝統思想である「易」や「陰陽五行説」との比較を論じました。
高桑氏が今回このテーマを取り上げたのは、昨今、マクロビオテックが陰陽五行説で語られる世界的な傾向に対し、なぜ桜沢如一は「陰陽五行説」を意図的に語らなかったのかという視点から、桜沢の「無双原理」「宇宙の秩序」といった思想が、東洋の伝統的な思想である「易」や「陰陽五行説」を解体・再構築して、西洋の科学的思想をも取り込めるようにアップデートされたものと解説します。
そしてそのアップデートされた「無双原理」や「宇宙の秩序」は、東洋の伝統的理論体系とのベクトルの差が生まれ、ハレーションを起こしているとします。結論として伝統的陰陽五行説をマクロビオティックに組み込むことには、さまざまな注意と研究が必要であると論じました。
資料室、海外の活動報告とまとめ
研究発表が終わると、桜沢如一資料室の司書ボランティアである桑山一美氏と村井友子氏から、資料室の活動報告と電子化プロジェクト第3弾の支援金募集のお知らせがありました。今回で最後となる支援金募集で、桜沢如一の外国語書籍を中心に電子化する予定とのことでした。
また、海外の若手の活動報告として、高桑氏からポルトガルの研究グループ「Philosophy and Science of the Far East according to the teachings of Sensei George Ohsawa(ジョージ・オーサワ先生の教えによる極東の哲学と科学の研究グループ)」と5月に来日したイタリア・トレンティーノにある「stile macrobiotico associazione」が紹介されました。
これらの活動の中心は20代~30代の若手で行われ、桜沢如一資料室にも頻繁にコンタクトがあり、資料の提供を中心にした相互交流を積極的にしているそうです。
最後に、共同主催の正食協会代表の岡田恒周氏がまとめの挨拶をし、十代さんの発表にあった桜沢如一の言葉「人がこの世で実現できる最も偉大なことは、ある人の考えをすっかり変えさせ、行動にふるいたたせ、一つの大きな夢を実現させ、その目的達成に全てを犠牲にさせることである。」を引用し、この大会で発表したみなさんがその偉大なことをしていると激励しました。
今回の大会は、前半は正食協会らしい生活に根差した思想としてのマクロビオティックが語られ、後半は資料室メンバーらしいグローバル&マニアックな研究発表になり、いろいろな視点からのアプローチがあり、視聴者もたくさんの気づきがあったと思います。
来年は、ここにまた正食協会や日本CI協会以外からの発表者が加わることを期待します。また来年もお楽しみにお待ちください。
なお、この研究発表大会の詳細レポートは、マクロビオティック ジャーナル2024年冬号に特集として掲載される予定です。
【大会概要ページはこちら】
https://ci-kyokai.jp/event/gol-cp2024/