【WEB限定記事】桜沢如一の弟子、八木数子さんの伝記本が出版
「おしものをつつしみ、最後に勝つものたれ」
桜沢如一が、終戦の前年である1944年7月に、徴兵された弟子たち40名に送った電報の言葉です。
おしものとは、「食物」のことです。
桜沢は終戦の一年前、日本が敗戦間近であることを確信し、弟子たちに、もうすぐ戦争は終わるので、ここで無駄死にはするなということを暗に伝えたとされます。
この電報を受け取った一人に、当時特攻隊で出撃間近であった弟子の八木順成という人物がいました。
順成は、この電報を受取り、上官に自分は昼の戦闘なら自信があるが、夜に爆弾を抱えて沖縄まで行って戦って帰える飛行には自信がないと訴え、不思議にもその訴えが認められて、特攻隊の留守部隊の隊員に役職が変わり、そのまま終戦を迎えることになったのです。
桜沢は他の手紙で、順成に「君の筆跡を見ると、少し陽性すぎるので、断食をしてはいかが」とも伝えています。
つまり、桜沢は陽性になり過ぎて勝ちを急ぐのではなく、陰性になって今は負けてもよいから、最後に勝つ者になれと言っているのです。
そうして生き残った順成は、桜沢からアメリカで正食品を作れという使命を与えられ、同じ頃桜沢の弟子として渡米した数子と結ばれ、二人三脚で試行錯誤しながら、カリフォルニアに梅園を作り、梅干しや味噌などの正食品の製造に成功するという数奇な人生を送ることになるのです。
そんな八木順成と数子の物語が、一冊の本となって発売されました。
この本は、2000年に順成が亡くなったあと、現在93歳になる数子さんの活動を支えた人たちが、数子さんの聞き書きを元にまとめたマクロビオティックな人生を描いたライフストーリーです。
とにかく驚くべきは、数子さんの詳細な記憶力です。マクロビオティックに出会って、数奇な運命をたどるさまざまな出来事や魅力的な人たちとのドラマが、いま目の前で展開されているように語られています。
そして、数子視点のストーリー、順成視点のストーリー、順成自身が晩年残した遺稿を組みこむことで、男女の視点の陰陽、物語性と資料性が見事に交差し、重層的な読み応えのある作品となっています。
この本は、数子さんの大切な思い出を、なんとか後世に残そうと協力する多くのマクロビオティック関係者の情熱では成り立っています。
桜沢如一資料室も、この作品の事実確認などで協力させてもらっています。
マクロビオティックが、人に影響を与え、その人生をどうダイナミックに変えていくかというリアルな物語を、ぜひ皆さん読んでみて下さい!
『数子さんの梅物語: 北カリフォルニア マクロビオティック人生』 著者:田中晴子
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