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【ジャーナルWEB公開記事】2025年秋号「提言」水上 洋子

提言 水上 洋子

免疫力強化には、オーガニック食品を

コロナ禍中、一般的な店の売り上げは下がっているのに、ある地方の自然食品店では、「かえって売り上げが伸びた」という話を聞いた。コロナ禍は、「免疫力の強化が大切」という考え方が広まるきっかけになったようだ。免疫力強化のためにたよりになるのは、やはりオーガニックやナチュラルな食品というわけだ。

現代人の食生活を振り返ると、農薬や化学肥料で栽培される農産物、添加物オンパレードの加工食品がほとんど。農薬も食品添加物も主に石油から作られた化学物質である。毎日、このような食生活を続けていれば、当然ながらかなりの量の化学物質が体内に蓄積することになり、結果的に免疫力の低下をもたらす。

化学物質による体内汚染という視点からみると、ガンも関係がある。今や日本人の2人に1人は、ガンになるという統計が出ている。ガンの増加は、世界的な傾向である。その主な原因は、体内に蓄積する化学物質ではと言われている。

食品だけではなく、洗剤や化粧品も体内汚染の原因

ところで化学物質が体内に入る経路というと、つい食品に目が向けられがちだが、それ以外にも見逃せないものがある。洗剤や化粧品だ。こちらは、皮膚から直接、体内に入るので、いわゆる「経皮毒」になってしまう。

洗剤や化粧品の化学物質は、「食べ物ほど気にしなくていいのでは」と考える人も多いようだが、実はそうではない。食品の場合、化学物質は、肝臓や腎臓など無害化する臓器を経た後、排出される。(といってももちろん完全な排出はできないだろうが) しかし「経皮毒」の場合、洗剤や化粧品の化学物質が表皮から直接に毛細血管に入り込み、その後、血流とともに体中を巡って蓄積し、体内汚染を招く。

環境ホルモンになる化粧品の化学物質

アメリカの有害物質専門家として知られるイヴォンヌ・バーカート博士は、「化粧品に含まれる化学物質が、ニセのホルモン(=環境ホルモン)になる」と警告している。たとえば化粧品の防腐剤としてよく使われているパラベンは、「皮膚から体内に入り、胸や性器などにある女性ホルモン受容体に達すると、ホルモンと同じ働きをして、細胞の増殖を促す指令を出す」というのだ。たしかに「食べ物に気をつけていたのにガンになってしまった」という話もよく耳にする。

また近年、増え続けている「化学物質過敏症」は、男女比を見ると、男性3割に対して女性7割という。女性が多い理由は、化粧品ではないかという指摘もある。やはり深刻な疾患や病気を避けるには、食品だけではなく、肌に触れる洗剤や化粧品などにも十分注意する必要がある。

自然食品店に並ぶ合成洗剤、合成化粧品

昨今、とても気になっているのは、自然食品店に並んでいる洗剤や化粧品。成分をよく見ると、石油から作られた化学物質が配合された商品が意外と多い。合成防腐剤であるパラベンが入っていないとしても、「フェノキシエタノール」という合成防腐剤がよく使われていたりする。「フェノキシエタノール」も石油から作られた化学物質で、パラベンと同じく分解しにくい二重結合のベンゼン環が含まれており、環境ホルモン性がある。

また洗剤のコーナーを見ると、「アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム」などが配合された商品がある。「アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム」は、環境省が「環境と人体に有害な化学物質」と認めている合成の洗浄成分だ。「アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム」は、シャンプーや歯磨きの洗浄成分としても使われるが、この場合は名前が変わり、何故か「ラウレス硫酸ナトリウム」になる。別名になってしまうのは、洗剤の洗浄成分が、歯磨きやシャンプーと同じ洗浄成分と知って「ギョッ」とする人が多いか
らだろうか?

いずれにしろ自然食品店に「環境と人体に有害な化学物質」が入った商品があるのはまずい。自然食品店に来る客は、「ここで売られている洗剤や化粧品も、有害な化学物質とは無縁なもの」と信頼しているのだから。残念ながら自然食品店の経営者や卸業に関わっている方々は、安心安全な食べ物については知識があるが、洗剤や化粧品の化学成分については学ぶ機会がないのではないだろうか。

真のオーガニックライフを推進する基地に

農薬や化学肥料を必要とする通常栽培の農産物は明らかに環境汚染につながる。私は基本的には、自然食品店を応援している。しかし今の環境汚染の原因は、農薬だけではなく、洗剤や化粧品の化学物質も大きく関わっている。それらは体内汚染になるとともに、使い終われば河川や海の環境汚染にもなる。

自然食品店は顧客の信頼に応えて、食品だけではなく、洗剤や化粧品も化学物質フリーの商品を置いてほしい。消費者が食品だけではなく、「衣食住」総合的に本物のオーガニック商品を使うようになれば、体内汚染のリスクも減少し、同時に地球環境汚染も止めることが出来る。ぜひ自然食品店は、総合的に「衣食住オーガニックライフ」を推進する健康基地になってほしい。

2015年に「日本オーガニックコスメ協会」は、JOCAマークを作った。一般の化粧品だけではなく、オーガニックと称する化粧品にもかなりの化学物質が使われている現状に、一石を投じるためだった。

JOCA マークを取得している化粧品は、完全に天然成分だけで作られていることを保証しており、現在50メーカーが取得している。たとえ化粧品の成分がわからない人でも、JOCAマークを目印にして化学物質フリーの化粧品を選ぶことができる。

もし本当に安心安全な化粧品を置きたいと考えている自然食品店から要請があれば、当協会はそれに応えてJOCAマーク取得化粧品やメーカーも紹介するので、ぜひ声をかけて頂きたい。

「日本オーガニックコスメ協会」は、地球と人の健康を守る、真の自然食品店を応援しています!

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著者プロフィール

水上 洋子/みなかみ ようこ
JOCA 日本オーガニックコスメ協会代表。北海道出身。同志社大学文学部卒。1981年、エッセイを刊行、以後恋愛エッセイと、1987年からは恋愛小説とを多数刊行する。1994年頃からはスピリチュアル・フェミニズムの立場に立ち、「すべての女は女神である」とし、エジプトの多神教・母系世界を理想視しており、女神文明研究会主宰。自身のブログで『女王ハトシェプスト』を発表している。オーガニックライフ誌「アイシスラテール」の編集に携わっている。

https://joca.jp/

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